神戸は150年前から実験都市だった 2・3日に「078 Online」実行委員長に聞く

20200501[078]実行委員長

 音楽、映画、ファッション、インタラクティブ、キッズ、食、アニメといった多様なテーマが交錯したイベントを同時に開催するクロスメディアイベント「078(ぜろななはち)KOBE2020」の実行委員長を共同で務める、藤井信忠・神戸大学大学院システム情報学研究科准教授(写真左)と、福岡壯治・神戸電子専門学校校長(同右)に話を聞いた。

 初回から昨年までの3年間は5月の大型連休うち数日を「078」の会期に充てたが、今回は新型コロナウイルスの影響で8月・9月に内容を分散して延期することになった。一方で当初予定した日程の5月2〜3日はオンラインイベント「078KOBE 2020 Online」を開催することも決めた。「078」を開催するねらいや、イベントに込めた思いなど聞いた。

−−「078KOBE 2020 Online」を開催することになりました。

藤井 基本的には8月と9月にイベントをスライドして開催する予定です。ただ、せっかく当初の日程、5月2~3日に予定を空けていただいていたけれど、秋には都合が合うか分からないという登壇者の方もいらっしゃいました。それに企画の鮮度もありますので、在宅で楽しんでいただけるものを提供できればということで。最近、アフターコロナ、ウィズコロナ(after/with corona)なども言われるようになり、コロナの後を考えるセッションも用意しました。それと、たとえば(ガンホー・オンライン・エンタテイメント創業者の)孫泰蔵さんに参加してもらうのですが、おそらく神戸まで来てもらうのは難しかったでしょう。オンラインの空間を超えるというメリットも最大限、活用したいです。

福岡 アフターコロナというキーワードが出ましたが、コロナの影響が収束した後に、社会が元に戻るかというと、違うだろうと思っています。もともと「078」は、指数関数的といわれた技術の進歩によって、社会をよりよく変えていくという思いの集約点なのです。しかし、これまで世の中全般には、そうした進歩に対して前向きな姿勢ばかりではなかった。そこで我々が大きな声を出して、呼びかけたりしたわけです。ところが、今回の新型コロナで一気に進んでしまった。家で仕事をする人も急速に増えた。そこは正直に言うと、なんとも言えない思いです。

−−神戸を「実験都市」にすることを標榜しています。

福岡 実は神戸は150年前から実験都市でした。いま旧外国人居留地といえば石造りの建築を中心に、ノスタルジーの文脈で語られることが多いですが、建築史家の小代薫さん(神戸大学特命講師)によると、そのとき神戸にいた外国人と先進的な神戸市民が、世界のどこにもない、実験的なエリアを作ろうとして、いろんな知恵を出して作ったのが旧居留地だそうです。その「実験都市」のマインドを復活させるのが078だと思っています。昔から住んでいる人も、新たに神戸にすみ始めた人も、国際都市や港湾都市の気風は大事にしたいという思いは神戸市民の間で共有しているのではないでしょうか。その気風とは、やっぱり「進取の精神」だと思うんです。だからネットもバーチャルも、どんどん取り込んでいく必要があります。

藤井 いままでの神戸のイメージの延長ではない、実はみんなが忘れていた神戸ならではのアイデンティティーって何だろう。それを考えるのが078である、とも言えると思います。078そのものが何かを生み出すことも当然あると思いますが、参加していただいた市民のみなさんが、それぞれの「都市生活」の中に何か新しい試みを始めるきっかけになればと、ずっと思っています。ぜひとも、多様な価値観に触れ合ってほしいと思って全体の構成を考えています。

−−078には、どのような未来が投影されているのでしょうか。

福岡 まずは「市民発動」です。必ずしも078だけではないですが、市民の発動による実験がいろいろ始まっています。たとえば東遊園地が芝生化されたのも、もともとは「デザイン都市・神戸」創造会議の中で、我々が提案したことからでした。都市の生活文化としてリスペクトできる都市は、ビジネス的にも成功しています。たとえば078が参考にしたイベント「サウス・バイ・サウスウエスト」の開催地である米国のテキサス州オースティン、あるいは米オレゴン州ポートランド、ドイツのベルリンとか、共通して言えるのは、みんな市民が強いということ。市民の中から自発的に湧き上がってきたもの、たとえばちょっとしたアイデアを出す人と、それを具体化できるエンジニアがクラブで出会って社会を変えたりしている。そういうことが日本で起きるなら、神戸であってほしいというのが078を通じての願いです。

20190427開会式
2019年の開会式

藤井 それと神戸は大都市つまり消費地であるにもかかわらず、西区や北区に生産地も持っているというのが強みだと思うんですよね。「地域循環共生圏」「サーキュラー・エコノミー」などと言ったりもしますが、078は農業や漁業など自然資源に関わっている人のイベントでもあると思います。「食」という形で接近していますが、もっと取り込んでいけたらと思っています。それに、また別の観点で「スマートシティ」という言葉がありますが、これからは「スマートシチズン(スマート市民)」の時代だと思うんですね。「スマート」な生活を望む人が集まって、結果としてスマートシティができ上がる。だから、われわれは「都市生活」にこだわって、都市生活のソフトを提供したいと考えているわけです。それを作り出す面白い人たちに神戸に集まってほしいというのを、078を通じて表現していきたいです。

−−今年は秋に延期して8月29・30日と9月5・6日に開催します。

藤井 昨年まで東遊園地と、みなとのもり公園、メリケンパークに分散していたテクノ系音楽、ロック系音楽、キッズ向け、アニメ系のイベントを、今年は9月5・6日のみなとのもり公園に集中させることにしました。会場が分散すると、どうしても人も分散します。子供たちがいる前で音楽をやっていて、その隣のKIITO(デザインクリエイティブセンター神戸)でインタラクティブのイベントも進むという仕立てが、078の持ち味である多様性を最も生かせると考えました。どんどん違うジャンルの人に出会ってほしいと思います。また今回の新型コロナの影響で、神戸のライブハウスが共同で動画配信に取り組んだように、これまでライバルだった人たちが協力する動きも出ています。いろんな人に出会って、刺激を受けながら取り組むという意識は実行委員の間に高まっていると思います。

福岡 そして技術活用、新たな出会い、都市生活ということを進めていけば、新たな課題も浮上するわけです。たとえば、このところ急速に普及したテレビ会議システムでも、セキュリティについて問題点が指摘されました。次々に浮かび上がってくる問題を乗り越えなくてはなりません。未来社会の、いわば暗部についても、みんなが集まって情報交換ができるというのも078らしさだと思います。078は自分たちの街を開放して、面白くて心地よい街の「モデル」になるというのが最大のねらいです。新型コロナの影響で、いま海外から来てもらうのは難しいかもしれませんが、多くの船が神戸に集まって交易が生まれたように、世界の神戸でありたいと思うわけです。現実の今の神戸と比較すると、とても大きな乖離があるのですが、目指している到達点はそこだと信じています。

藤井 これからの時代を作る若い人には、もっと参加してほしいと思っています。まずは来場者。そして運営側に若い人たちがまだまだ少ないのは、実行委員会でも課題の1つだと考えています。さらに、若い人が刺激を受けて面白いと思ったことを実行する場所が神戸であれば、それは嬉しいですが、神戸で経験した面白いことを心に留めて、ほかの地域に育ってくれるというのも大歓迎です。「あの人、シリコンバレーから帰ってきた」というと面白い人かなと思ってしまいますが、「神戸帰りの人」というだけで他の都市では興味を持ってもらえるような、そういう都市をめざしたいなと思っています。

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