(解説)三宮の人出減少、志村けんさんも影響か 新型コロナ関連データを読む 

20200412三宮駅

 神戸市が新型コロナウイルスの感染防止を目的に設置した「データ解析チーム」の公表データによると2月以降、神戸市の都心三宮への人出は2段階で減少したと推定できることが分かった。神戸市営地下鉄三宮駅の乗客数が、都心三宮への人出と相関すると仮定すると、平日ベースでは3月2日と3月30日に大きく減少した様子がうかがえる。3月末に人出が減少したタイミングでは、著名コメディアン志村けんさんの死去も影響したように見える。

 グラフに示したのは神戸市営地下鉄三宮駅の乗客数だ。平日を青、土日祝を赤で示した。おおむね通勤、通学で三宮駅を使用する人の動きが青、買い物やレジャーなどで使用するのが赤で表すことができると考えられる。最初に青いグラフが大きく減少した3月2日は、政府が要請した小中学校などの一斉休校日の初日だ。神戸市では3月3日から一斉休校を実施したが、その前日から通勤・通学か客は減少していたとみられる。

 週末の人出も同様の傾向が見て取れる。日曜日より土曜日の方が人出が多いことから、土曜日に着目して比較してみると、2月22日までは2万5000人程度の乗客数だったのが、2月29日に2万人を下回った。それまでは通常と大きくは変わらない暮らしだったのが、「政府が学校を休みにするほどの一大事」との認識が広まったことがうかがえる。神戸市内で新型コロナウイルス感染者が初めて見つかったのは3月3日だったが、これは数値の動きに影響していないように見える。

 さらに2回目に大きく減少したタイミングは3月30日だった。この日の朝に伝わったのが、前日夜に志村けんさんが亡くなったというニュースだった。志村さんの死は、一段と新型コロナの感染拡大に対する切迫感を高めたとみられる。このころから東京を中心に政府に「緊急事態」の宣言を求める声が高まっていく。神戸でも観光などの「不要不急」とされる外出が急減した。中華街「南京町」(神戸市中央区)では大雨でも来店客の絶えない飲食店から、行列が消えたのは4月1日からだった。

20200413南京町

 4月6日以降は、平日の乗客数が階段状に減少している。7日に政府が緊急事態を宣言したことから、本格的にテレワークなどへの切り替えが進み、三宮や大阪など都心への通勤を控える動きが広がったようだ。加えて8日から多くの飲食店や百貨店などが休業に入ったことで、そうした店舗に務める人の通勤も抑制されたとみられる。12日現在では商店街「三宮センター街」(神戸市中央区)では休業する店舗も一段と目立ち、南京町も閑散としている。(写真は12日午後5時ごろの南京町)

 神戸の人の動きをこのように説明するとして、これはあくまで仮説にすぎない。ただ、気になるのは政府の一斉休校要請にしても、志村けんさんの死去にしても、東京発信の情報に多くの人の行動が左右されているという点だ。つまり神戸の実情に応じた動きになっていない可能性がある。メディアの東京一極集中はかねて課題とされてきたが、それが改めて浮き彫りになったともいえそうだ。

 仮に今後、神戸市だけで感染が拡大した場合に、神戸市の住民は適切に行動できるのだろうか。逆に、東京以外の多くの地域で感染が収束したとき、神戸の住民は緊急事態宣言の解除に納得するだろうか。兵庫県や神戸市は、東京中心のメディアが加盟社の大半を占める記者クラブにこだわらず、市民メディアやケーブルテレビを含めた地元でコンテンツを制作、送出するメディアへの情報提供を強化する必要がありそうだ。加えて住民の視点では、東京と神戸の情勢の違いには、みずから目をこらす必要があるだろう。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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