(解説)神戸製鋼の品質データ改ざん、企業統治や開示姿勢に大きな失望感

 神戸製鋼所が8日に発表したアルミ製品や銅製品の品質データの改ざんは、同社の企業統治(ガバナンス)や情報開示の姿勢に対する大きな失望感を呼んだ。国内外の幅広い分野に供給していた部品に品質データの改ざんが起きていたというだけでなく、株式市場では同社の経営危機にも発展しかねない問題との見方が広がった。同社やグループ会社の株価が急落したのはそのためだ。さらに昨年発表した社内調査の結果を踏まえると、今後同社が発表するであろう「調査結果」に対する信頼性すら保てない事態といえそうだ。

 報道などによると、過去10年にさかのぼった調査でも一部で品質データの改ざんが見つかったという。管理職も含め少なくとも数十人がかかわっており、長年にわたる不正が組織ぐるみだったことも明らかになった。品質を偽装した部品を納入した相手先は200社超という。自動車、新幹線、航空機、ロケットなど特に安全性が求められる分野の部品で強度を偽装した可能性があり、自動車はリコール(回収・無償修理)が検討されると一部で伝わるなど、大きな影響が出始めた。

 顧客が求める品質データ書き換えのため、法令や日本工業規格(JIS)違反ではない。ただ神戸製鋼が顧客との契約を守らなかったことで、リコールなどによって顧客に大きな損害が発生した場合、損害賠償などの発生も考えられる。特に海外企業から巨額の損害賠償を求められる可能性もあり、株式市場で会社の経営危機がささやかれたのも、この可能性に連想がおよんだためという面が大きい。

 神戸製鋼を巡っては、2016年に傘下の神鋼鋼線ステンレスで製品の強度偽装などJIS違反を隠していた問題が発覚した。これを受けて「製品の品質に関する法令の順守状況についてグループ会社で一斉に点検し、新たな不正や改ざんなどは見つからなかった」と16年6月21日に発表していた。この時点で今回発表した改ざんを同社は把握していたのだろうか。

 把握していなかったのであれば、現場から情報が上がらなかったという点でガバナンスに問題がある。一方、把握していたのであれば、発表自体が虚偽だったということになるだろう。いずれにしても顧客を含めた利害関係者に対する背信行為と言える。同社は川崎博也社長を委員長とする「品質問題調査委員会」を設置し、事実関係の調査を始めたというが、隠ぺい体質を一掃した正しい調査結果を示すことができるのかという点で、懐疑的な視線は避けられない。

 事実関係の解明や再発防止策の検討と同時に、根本的な社内カルチャーの改革も迫られた形だ。そもそも神戸製鋼は何の事業を通じて社会に貢献しようとしているのか。発覚したのが、祖業である鉄鋼事業で神戸製鉄所(神戸市灘区)の高炉停止を10月末に控えるなど、事業変革の時期と重なったことも偶然ではないのだろう。今回の品質偽装をきっかけに、改めて同社は存在意義を問われることになった。(神戸経済ニュース)

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神戸製鋼、アルミ・銅製品で品質データを改ざん 調査委を設置 (2017/10/08)

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