(寄稿)[神戸鳥瞰虫探し]変わる地域の雇用環境、神戸の新たな役割は?
- 2017/07/17
- 22:06
兵庫県内の労働市場に新しい動きが出てきた。勤労者数の変動を正確に反映する雇用保険統計を見ると、これまでと異なるのは①雇用保険の適用者数が急増②これまでけん引車となってきた神戸市中心部「以外」での増加が目立つ--という2点だ。この動きが示唆しているのは、実感はなくとも好景気などを追い風に産業構造が変化していることだろう。
これまでは兵庫県全体と神戸市中心部で雇用保険適用者数の方向感は同じで、おおむね神戸市中心部が全体をけん引する形だった。ただ、ここ数年は神戸市中心部よりも全県の動きが先行している。グラフは神戸職業安定所と灘職業安定所での雇用保険適用者数の合計を、兵庫県全体と比較したもの。傾向を見やすいように数値は3カ月移動平均にした。
同じ傾向は別の統計にも表れた。5月の安定所別就職率を見ると神戸が27.1%、灘が25.6%と2割台なのに対して、加古川、明石、姫路が30%台、洲本、龍野では40%台、豊岡では53.4%と神戸から離れた場所ほど高い数値になった。
もう少し雇用保険適用者数について詳しく見てみると、神戸で職を失ったり、退職したりする人が減少していることが分かる。雇用保険適用者数は、新たに職を得て雇用保険の資格を得た人と、失退職によって雇用保険の資格を喪失した人との差(純増減数)で示す。この純増減数の内訳では1~4月と、9~12月で資格喪失つまり失退職が増える傾向にある。適用者数全体の4割弱を占める神戸と灘の合計では特にそうした傾向が顕著で、1〜3月には失退職が新規雇用を上回る月があるのが常態だったのに、それが今年はなかった。
同時に、県全域での雇用が活発になっている。2003年から06年にかけては6万1000カ所台で推移していた県内事業所数だが、足元では7万台後半。神戸だけで全体をけん引する構造が崩れつつあるかのようにも見える。この統計から失退職者の年齢はうかがえないが、いわゆる団塊世代の引退が一巡するとともに、世代交代によって産業構造にも変化が生まれているのかもしれない。
5月の新規求人数で最も多いのは医療・福祉の9076人。2010年5月は4414人だったので7年で倍増した。サービス産業が急台頭している兵庫県に占める神戸の位置も、急速な変化にさらされている。
(候鳥)
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