(解説)論点2020・上 神戸空港アクセス、鉄道を敷設できる場所は限られる

20190511関西3空港懇談会2

 2020年の神戸では、神戸空港のアクセス強化を巡る議論が活発になりそうだ。神戸商工会議所は19年9月に神戸市に伝えた「神戸市政に対する要望」で、最重点要望項目のトップに「関西3空港懇談会の合意に基づく神戸空港の機能強化と空港アクセスの改善」を掲げた。「地下鉄を含む新たな鉄軌道」の整備を求めたのが特徴。現在のポートライナーだけでは物足りないうえ、山陽新幹線の新神戸駅と神戸空港の結節がカギになるとした。神戸経済同友会もほぼ同様の内容を神戸市に要望した。(1枚目の写真は2019年5月11日の関西3空港懇談会)

 これに対して神戸市の久元喜造市長は、ポートライナーの輸送能力は通勤・通学ラッシュになる午前8時台を除いては、神戸空港を利用する旅客輸送の需要を満たしていると指摘。新神戸駅と神戸空港の結節については、道路整備などを強化して、バスを活用する方針を示している。神商からの要望に対しては、神戸市と神商との共同で勉強会を開催し、現実的に可能かどうか研究を進める方針を示した。神戸市としては、神戸空港への鉄道乗り入れを急がないようだ。

 昨年5月に開いた関西3空港懇談会では、大阪・関西万博を開催する2025年までに神戸空港への国際線の就航を検討する方向を打ち出した。向こう5年のうちに神戸空港への鉄道乗り入れや、三宮に神戸空港からの鉄道駅を建設できる可能性がほぼゼロであることを考えると、久元市長が主張するバス輸送の強化で対応するのは現実的に見える。神戸空港は24時間空港とはいえ、あくまで関西国際空港を補完する役割であることを考えると、相当無理な鉄道建設による新たな1000億円単位のインフラ投資が割に合うとも思えない。

20200105臨港線

 どうしても神戸空港に鉄道を乗り入れたいとなれば、すでにあるインフラを活用するルートが1つだけある。現在の摩耶駅から2003年まで神戸港向けに伸びていた「臨港線」を復活させることだろう。HAT神戸あたりで南下させ、港島トンネルを拡張して鉄道も通す。臨港線跡地である現在の遊歩道(2枚目の写真)に、改めて線路を引きなおすルートぐらいしか、市街地の中に既存の鉄道とつながる線路を敷設できる土地が見当たらない。新たに三宮から神戸空港に向けて大深度の地下鉄を建設するよりは、格段にコストを抑えられる。

 三宮と神戸空港を鉄道で直結することはできないが、京都や大阪、あるいは関西国際空港から神戸空港行きの特急を走らせることはできるだろう。神戸空港から新大阪駅まで30分かからない。関空行き特急が「はるか」なら、神戸空港行きは「かなた」だろうか。摩耶駅でスイッチバックして姫路方面に向かう新快速(空港快速)だって運転できる。新神戸や三宮では、手荷物を預かって各空港まで届けるポーターサービスを充実させるべきだ。空港利用者を手ぶらにして神戸都心を通過させることで、移動のストレスは大幅に軽減できるばかりか、新たな買い物需要を喚起するだろう。
(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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