(解説)論点2020・下 須磨水族園、志の低さは集客・人口にどう響く?

20200105リニューアル後

 神戸市は事業者の提案がそのまま実現するわけではないというが、2024年春をめざして実施する神戸市立須磨海浜水族園(神戸市須磨区)のリニューアル計画は「志(こころざし)が低い」と評価せざるを得ない。集客のためには「目玉」が必要で、これまで神戸で見られなかったダイナミックなシャチのショーを持ってくるというのは、興行的には理解できなくもない。しかし歴史的経緯を踏まえると、水族園の利用者や納税者が期待していることは、はたしてそこだろうかという疑問が残る。(図はリニューアル計画の完成予想図=神戸市提供)

 須磨海浜水族園は神戸市立の小学校では必ず遠足(校外学習)の目的地になるほど、教育研究機関だった。少なくとも、そう思われていた。だから同水族園の職員が瀬戸内海の貧栄養問題について発言しても説得力があったし、またも海に住む生き物の専門家として同水族園からの発言を世論が期待していた面がある。しかし神戸市が選んだ、集客に強い力点を置いたリニューアルの計画は、教育や研究の役割から、「単なるレジャー施設」の方向に大きく舵を切ったように見えた。

 国民宿舎「須磨荘」の後継施設として水族園に併設する宿泊施設では、イルカの餌やり体験などができる宿泊者専用のイルカプールを設置するという。シャチのショー然り。これらは動物を「見せ物」にせず、できるだけ自然の環境を再現して研究のために飼育するという、世の中のすう勢に反する。「須磨ドルフィンコーストプロジェクト」など、自然に近い環境でイルカを飼育するこれまでの試みに対しても完全に逆コースだ。

 須磨海岸では実はビーチクリーンなどの市民活動も活発だ。市民活動の拠点である公共施設としても期待されていた水族園が、単なるレジャー施設なのに須磨海岸を我が物顔で活用するようになるのなら、ビーチクリーンも何のためにやっているのか分からなくなるだろう。

20200105須磨海浜水族園

 これまで納税を通じて神戸市立の施設である須磨海浜水族園を支えてきた神戸市の住民や、水族園を高い頻度で利用する人らに何の相談もなく、教育研究機関から単なるレジャー施設へと施設の使用目的を変更する計画を打ち上げた(少なくともそう見えた)のが、足元のリニューアル計画に対する反発といえる。それを住民団体などは象徴的に「入場料が高すぎる」という一言で表している。何のためにカネを取るのか、というわけだ。(写真は現在の須磨海浜水族園の玄関)

 見せ物が充実していることは集客力につながるのだから、損を出さないリニューアルとしては、もしかすると妥当だったのかもしれない。しかし、それは神戸に住みたいという魅力につながるかどうかとは別だ。住民の満足度というか、いわゆるシビックプライドを満たす施設をめざすのをあきらめ、集客のことだけを考えた志の低さは、みんなが望んでいることなのだろうか。納得して楽しめるだろうか。

 民間資金を活用した公園の再整備を試みたにしても、現在の須磨海浜水族園が経営に窮するほど利用者が減っていたという話は聞かない。神戸市内では数少ない、入場者数が年間100万人を大きく上回る主要な観光地だ。それだけに、須磨海浜水族園は施設が単独で集客できるかだけが問われる施設ではない、という視点も重要だ。同じことは、現在再整備の設計が進む東遊園地(神戸市中央区)や、今後再開発が見込まれる摩耶山掬星台(神戸市灘区)など六甲山にも当てはまる。
(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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コメント

「須磨海岸をきれいにする」方々と、水族園の中の人は全く別物だと思いますよ。
水族館は中に入れば分かりますが、設計が古く天井も低いですし、他都市の水族館と比べてみると内容はあまり変わらないにせよ、どうしても設備面での老朽化はあると思います。100万人の利用者がおられるとはいっても海遊館には見劣りするわけです。まぁ海遊館は別格かもしれませんが。
確かに1300円は良心的でしたね。
でも逆に今までが安すぎたのかもしれません。
量よりも質を求める上でやむを得ない選択ですね。減価償却が進み、他水族館と競争になるならいずれ料金も下がっていくかもしれません。
過去を維持するのも大事ですが、須磨の現状を鑑みれば、地域の再開発も限られる中でのイメージアップは必要だと思います。
「安いから行く」という理由ではなく、素直に「行ってみたい」と思わせてくれる施設になってくれることも必要ではないでしょうか。

No title

ななしさんのご意見もっともです。ただ世界的な批判があり、さらに飼育が難しいシャチの為の施設を今更造ることに疑問です。

餌代からして高く難しいシャチの維持費、これも実情です。このコストは上がり続けます。現在シャチを飼うシーワルド自体があまりの餌代の高さや難しい飼育のため繁殖を停止し今の世代で終わらせる事が決定してます。

年間パスポートを持っていてスマスイには毎月ぐらい行っています。設備の老朽化は目にして理解しています。今が良いと言うので無く改築は致し方ないことです。

ただ後継の条件は当初入場料は大きく上げないと言う条件がありました。それがまさか幼児ですら0円から1800円まで上がりその要因がシャチである事も分かっています。

そして新水族館での集客が出来ないと私らその神戸市民にツケは来ます。この計画、性急過ぎたと考えます。

なるほど、そういう事情なのですね。
是非はともかく知りませんでした。
私は値段を下げることには賛成です。
確かに3000オーバーは高いし、
子供の負担も大きい。
どうしたらいいんでしょうかね。
もうとっくに決まった話で押せ押せゴーゴーの一歩手前なのでしょうか。
気づいたら2月の半ば…。
運営会社もしくじりたくはないでしょうから
計画の変更も柔軟に行って頂きたいですね。
これくらいのコメントしか残せず申し訳ない。

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