(解説)論点2020・中 スタートアップ支援、金融市場の環境変化で正念場か

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 スタートアップ(ベンチャーファンドなどの支援を受けて急成長を目指す起業家)への支援が世界で活発になった背景には、先進国の低金利がある。日米欧そろって中央銀行による政策金利がほぼゼロという事態が長期化したことで、従来の債券投資では利回りが確保できなくなったということが大きい。株式と債券以外に投資する「オルタナティブ投資」の一環として、ベンチャーファンド(ベンチャーキャピタルとも)にグローバル投資家の期待が高まった。(1枚目の写真は2019年7月に神戸市内で開催したインフィニティ・ベンチャーズ・サミット)

 オルタナティブ投資の手法はスタートアップ支援だけではないが、当初期待されていたヘッジファンドなどは手法の陳腐化などでブームが去った。不動産なども流動性の高い(売買しやすい)物件は既に割高感が指摘されている。そんなこんなでベンチャーファンドに資金が流入。特に「目利き」と期待されて従来と比べものにならないほどの資金を預かり、投資先に困った米国のベンチャーファンドが日本やアジアのスタートアップに着目するのは自然な流れだった。

 実績の乏しい起業家でも、ひと声かければ1億円といった資金が集まる状況は一種のバブルと見ることもできそうだ。投資家であれば、そろそろ調整を警戒する局面だ。というのも米国で長期金利の上昇が目立っている。パウエル米連邦準備理事会(FRB=米中央銀行の意思決定機関)議長は利下げの打ち止めを宣言。米長期金利は昨年9月を底に、上昇に転じた。この傾向が今後も続くなら、債券投資の復権が考えられる。

 一方で、特に日本のスタートアップは投資を回収する「出口」も不透明だ。ベンチャーファンドが投資を回収する機会といえば投資先のIPO(新規株式公開)だが、昨年の東京市場で株式を新規上場した会社のうち、設立から5年以内だった会社はなかった8社にとどまった。スタートアップ支援は債券投資に代わるオルタナティブ投資なのだがら、3~5年で1つの成果を得たいところ。こうした企業の上場が増えるかどうかを見極めるうえでも2020~21年は正念場だといえそうだ。

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 スタートアップ支援のもう1つの出口は大企業による買収だが、これは景気に左右されやすい。研究開発投資の費用は、利益の調整弁になりやすいからだ。19年の秋口以降には神戸市内でも毎週のように開催された、スタートアップ各社が連続して数分間ずつ事業を紹介する合同事業説明会、いわゆる「ピッチ大会」にはCVCと呼ばれる企業内ベンチャーキャピタルの姿も見られたが、これらの投資が続くかは不透明だ。

 1987年のブラックマンデー、1997年のアジア通貨危機、2008年リーマンショックと、約10年ごとに金融市場の混乱によって資金調達をめぐる環境は一変する。これまでは中央銀行が民間部門の負債を丸抱えすることで金融市場の変動を押さえ込んできたが、はたして持続的なのだろうか。

 ひとたび金融市場が混乱すれば、もともとリスクが高いとされるスタートアップへの投資は一斉に引き上げられかねない。それぐらいスタートアップ投資の資金は流動的で、市場の動向に影響を受けやすいことを肝に銘じておくべきだ。その際には国内各地の自治体が展開するスタートアップ支援も、継続の可否について判断を迫られることになる。金融市場のプレーヤーが自治体のパートナーであれば、影響が大きくなりやすいことも覚えておいて損はない。(2枚目の写真は19年12月の「500 KOBE Accelerator」のデモデイ)
(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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