メガFTAには期待の声、IT化は標準化巡りにらみ合いか 神戸税関でシンポ

20191129神戸税関シンポジウム

 神戸税関が29日に開催したシンポジウム「これからの国際物流を考える」では、第2部のパネル討論会で、政府が相次いで締結している大型の自由貿易協定(いわゆるメガFTA)に期待する声が相次いだ。輸出企業にとっては、輸出先での税金費用の減少で「より価値の高い投資ができる」(シスメックスの小野隆執行役員)という。一方、海外で取り組みが先行している物流のIT化については、複数のシステムが標準化を巡りにらみ合う構図が浮かび上がった。

 シスメックスでは、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で「試算すると1億円ぐらいのコストダウンになっている」という。兼松の寺崎誠司IT企画部長は、相次ぐFTAは「商社にとってもビジネスチャンス」とみる。自由化によるスムーズな物流は環境にもプラスとの指摘もあった。制度や運用の変更も相次ぐため「税関当局からの前びろな情報提供もいただきたい」(日本通運の朝日誠人・神戸国際輸送支店長)との声も出ていた。

 大型のFTAでは、既に発効した11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP11)、日EU・EPAに加え、2020年には日米EPAが発効予定、日中韓を含む16カ国が参加した東アジア地域包括的経済連携(RCEP)も議論が進められている。
 
 IT化を巡っては、コンテナ船世界最大手のAPモラー・マースク(デンマーク)と米IBMが開発した情報共有システム「TradeLens」(トレードレンズ)の活用が進むが、国内ではNTTデータを中心とした「ブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携基盤実現に向けたコンソーシアム」が実証事業を実施。各国、各地域でも異なるネットワークが立ち上がっているのが現状だ。利用者として「できれば1つのまとまったシステムがほしい」(日通の朝日氏)と早期の標準化を望む声も出ていた。

 このほかパネル討論では、最近の人手不足や神戸港への期待についても議論した。シスメックスの小野氏、日通の朝日氏、兼松の寺崎氏に加え、神戸大学大学院の竹林幹雄教授(国土計画)、神戸市の辻英之・港湾局長もパネリストとして出席。司会は大西靖・神戸税関長が務めた。

 第1部では国際通貨基金(IMF)の鷲見周久アジア太平洋地域事務所長が「IMFからみた世界経済・貿易の動向」をテーマに基調講演。IMFが2019年の世界の経済成長率(GDP)を3.4%の見通しと、08年のリーマンショック後で最低になると予測する背景は、米中貿易摩擦の影響もある説明。さらにIMFは長期にわたって米中摩擦の影響が残る可能性も高いとみており、米国には貿易収支や経常収支を2国間で考えるのをやめるよう働きかけていることなどを紹介した。

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