(解説)大阪万博決定 経済効果2兆円で神戸にも恩恵か、出展者の準備拠点にも

20181124大阪万博会場想像図
(会場の想像図=立候補申請文書)

 2025年に大阪市で国際博覧会(万博)を開催することが23日(日本時間24日未明)、パリで開催した博覧会国際事務局(BIE)総会で決まった。会場は大阪市此花区の人工島「夢洲」で、神戸港から目と鼻の先の地区だ。このため2兆円とされる経済波及効果の恩恵を、神戸経済も受ける可能性が出てきた。さらに会期以降も含む長期的な経済効果につなげるには、出展者のバックヤード(準備拠点)として神戸医療産業都市などが選ばれるかが鍵になりそう。特に非政府組織(NGO)や個人など、これまでにない多様性が見込まれる出展者の支援が焦点だ。

 会期は25年5月3日〜11月3日の185日間を予定する。テーマには「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げた。多様性を維持しながら心身ともに健康な生き方とは何か、そのために必要になる持続可能な社会や経済システムとはどういったものか。そうした人類全体の課題を解決するための手がかりになるアイデアを、出展者らが披露する場になる見通しだ。入場者数は約2800万人を想定する。

 経産省などが17年9月、BIEに提出したビッド・ドシエ(立候補申請文書)によると、約180億ドル(約2兆円)の経済波及効果を試算している。まず考えられる経済効果は訪日客の増加による消費の活性化だ。万博入場者数のうち想定どおり約1割が外国人としても、昨年1200万人程度だったとみられる関西に立ち寄った訪日客を3割押し上げる。大阪から京都・奈良や神戸などに観光客が流れることを想定した動きが今後、活発になりそうだ。

 さらに医療や福祉が中心的なテーマになることから、神戸医療産業都市が活躍する場面も出てくるとみられる。限られた会場の展示スペースで最先端の技術や機器を展示するには、そのための準備拠点に会場に近い場所として神戸が選ばれる可能性がある。このほか、万博をきっかけに医療やヘルスケアに関する国際会議などが大阪を中心とした近畿地方で増える可能性も高い。医学会の開催地として定評を得つつある神戸でも、MICE(国際会議や展示会など)の需要増を取りこぼさないように、準備を進める必要があるだろう。

20181124夢洲航空写真
(会場予定地・夢洲の航空写真=同)

 大阪府の松井一郎知事は開催決定直後のパリで開いた記者会見で、「これまでの万博の常識を打ち破る」と話していた。従来は構造上、各国政府や大企業によるパビリオンが多くを占めていたが、大阪では小規模NGOや個人などのブースやワゴンによる「マイクロ出展」も予定している。立候補申請書ではブースとワゴンで200団体の出展を見込んでいるが、世界の多様性を加味してバランスを取れば、出展数は想定どおりに収まらないのではないか。出展者数が従来の常識とは異なる次元に入るなら、その支援体制も強化が必要になる。

 大阪には道修町(大阪市中央区)の医薬品メーカーを中心として、医療に関連する産業の集積がある。このため伝統的な万博出展者の準備拠点は大阪に任せるにしても、NGOなどの非伝統的な海外出展者の準備拠点を神戸に取り込むことを考えてもよいのではないか。幸いにも神戸には、海上ルートを想定するなら万博会場から20分程度に位置するポートアイランドに、かなり広い土地がある。企業や政府とは異なる世界のネットワークを持ち、俊敏な動きが可能な彼らが会期後も日本の拠点として神戸にとどまるようなら、神戸医療産業都市にとってもプラスの効果が出るはずだ。
(神戸経済ニュース 山本学)

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