(解説)アサヒHD株に上昇余地の見方 大幅増配と成長イメージを両立か
- 2018/10/28
- 22:48
前週末27日の東京株式市場ではアサヒホールディングス(アサヒHD、コード5857)が急伸し、制限値幅の上限(ストップ高)の2307円まで買い進まれた。26日大引け後に年間配当を120円と、前期の74円から大幅に引き上げると発表したのが買い材料視された。好業績で買い安心感があったところに、株主への利益配分を強化したのが好感された。さらに同社は同時に成長投資の計画を同時に示したのが奏功したとみられる。同業他社との比較から、アサヒHDの株価にはまだ上昇の余地があるとの指摘もある。
26日のアサヒHDの株価をもとにすると、配当利回りが6%台と東証1部のランキングでみて上位に浮上していた。中期経営計画で「30%以上」としていた配当性向を「50%以上」に引き上げ、今後も高配当を示唆した。27日の同社株は朝方から買い気配をストップ高まで切り上げ、その後はストップ高近辺で断続的に売買が成立する展開だった。
教科書的には配当は社外への現金流出とあって、配当が確定すれば「配当落ち」も発生する。だが、社内で持て余している現金があるのなら、投資家に還元するのが筋だろう。増配で株主を向いた経営をしているのをアピールするのが最近の傾向といえる。そこで増配という話になるのだが、さらにアサヒHDの場合は、成長投資の計画を同時に示した形になった。
向こう3年間の累計で、商品の販売収入から経費を差し引いたの営業キャッシュフローが370億円になると見込む。このうち焼却炉の新設や米国での金の精錬設備など成長戦略投資に185億円、既存設備の更新投資に30億円を充て、そのうえで残りの155億円を全額配当に回すという。一方で19年3月期に239円90銭を予想する1株利益は、21年3月期に277円01銭まで15%増加すると見込む。これで「成長性」と「株主への分配強化」が相乗的に株価を押し上げることになったようだ。
27日終値時点でアサヒHD株のPERは今期予想ベースで9.6倍。同業である松田産業(7456)の10.5倍やアサカ理研(5724)の17.4倍を下回る。市場関係者からは「アサヒHDの成長性などを評価するなら、同業他社との比較感から12倍程度のPERは許容されそう」といった声が出ていた。となるとアサヒHDの株価は2800円台に上昇する計算だ。
もっともアサヒHDの収益は国際商品市況に左右されやすい。足元の4〜9月期業績も、パラジウム相場の堅調な動きの恩恵を受けた。今後米利上げの影響で国際商品市場から資金が流出し、金などの価格が大幅に下落するのがリスク要因の1つといえそう。計画通りに順調に収益が確保できるかは、成長投資の進展と国際商品相場を両にらみで見ておく必要がありそうだ。(神戸経済ニュース 山本学)
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