スパコン「京」の活用、住友ゴムに優秀成果賞 RISTがオンラインで受賞式
- 2020/10/31
- 02:46
2020/11/02 22:00 写真を差し替えました
昨夏で運用を終了したスーパーコンピューター「京」の利用支援業務を手掛けた高度情報科学技術研究機構(RIST、茨城県那賀郡東海村)の神戸センターは30日、スーパーコンピューターの活用で優れた成果を出した研究を表彰する「優秀成果賞」の表彰式をテレビ会議システムを通じて開催した。受賞した8つの研究課題のうち、住友ゴム工業は「タイヤ用ゴム材料の大規模分子動力学シミュレーション」で民間企業のプロジェクトとして唯一の受賞。同社研究開発本部の角田昌也・研究第一部長(写真右=住友ゴム提供)が表彰を受けた。
表彰式に先立って、同社の内藤正登・研究第一部課長(写真左)が講演し、研究内容について紹介した。内藤氏は「転がり抵抗を抑える低燃費性能と、地面をグリップする安全性と、長持ちさせる耐摩耗性能の3つは相反関係にあることが多いが、これらを同時に向上させることが求められた」と研究のきっかけを説明。分子レベルでゴムの動きを理解することで、新たなタイヤ用の素材開発をめざす中では、コンピューターによるシミュレーションが有効だった。
同社は「京」を活用する前から、自社で保有するスーパーコンピューターを活用したシミュレーションによって、新たな素材の開発につなげていた。ただ耐摩耗性能に対する取り組みでは、分子レベルから徐々に破壊が進展して、目に見えるゴムの摩耗につながるまで、きわめて幅広いスケールで現象が進展する。一連の動きを従来のスーパーコンピューターで再現するのは不可能で、大規模なシミュレーションができる「京」の活用は欠かせなかった。
「京」の利用によって開発した素材を採用した第1号のタイヤは2016年末に発売。その後もゴムの高強度化など「京」の活用を続け、素材の改良につなげている。「京」の運用は終了したが、住友ゴムでは引き続き「メカニズムに基づいて新しい材料を生み出し、高い性能の商品を実現する」(内藤課長)という開発手法を継続したい考え。来春にも運用が始まり、より幅広い産業利用をめざすスーパーコンピューター「富岳」の利用にも期待がかかる。
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