神戸にあった日本初の私設美術館を再現へ 川重の創業者が開設・神戸市立博物館
- 2022/07/06
- 23:58
【神戸経済ニュース】神戸市立博物館は6日、今秋に開催する特別展「よみがえる川崎美術館」の概要を発表した。現在の川崎重工業(7012)である川崎造船所を設立したほか、神戸新聞を創刊するなど多くの業績を残した明治期の実業家である川崎正蔵が、コレクションを自ら展示したのが川崎美術館だ。1890年に現在の山陽新幹線・新神戸駅あたりに開設し、日本初の施設美術館とされる。当時の川崎による所蔵品など、国宝2点、重要文化財5点、重要美術品4点を含む約80点の美術品を展示する。
廃仏毀釈などをきっかけに優れた日本の美術品などが海外流出するのを食い止めようと、川崎が美術品の収集を始めたのが同美術館の発端という。コレクションをただ保有するだけでは「美術界にとって無益であるばかりでなく、国の宝を埋没させる」と考え、私設美術館の建設に乗り出した。招待客だけが年に数日の公開日に観覧できる、限定的な公開だったというが、個人のコレクションを展示するのを目的とした建物ができたのは日本では初めてのことだった。
コレクションは1927年(昭和2年)の金融恐慌をきっかけに散逸してしまったが、それまでに千数百点の美術品が集まっていたのが目録などから明らかになっている。今回は、当時の川崎の所蔵品だった国宝・伝銭舜挙「宮女図」(個人蔵)や、川崎が「命に次いで大切にした」とされる重文・伝顔輝「寒山拾得図」(東京国立博物館蔵)などを展示。川崎美術館で使われた「円山応挙の襖(ふすま)絵」(東京国立博物館蔵)が描かれたふすまを実際に立て、美術館空間の再現も試みる。
川崎美術館は1938年(昭和13年)の阪神大水害や、第2次大戦での被害を受けて現存していない。神戸市立博物館では、ゆかりの美術品こそ所蔵していないが、同美術館の入場券などを保有。当時の記録類などもあわせて展示し、かつて神戸にあった日本初の私設美術館について、薄れゆく記憶を掘り起こす。神戸市立博物館の開館40周年を記念した特別展だ。「神戸にまつわる展示がしたい」(同館)と、5年の歳月をかけて企画した。会期は10月15日〜12月4日(月曜休館)。観覧料は当日・一般で1600円など。
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