神戸市の久元喜造市長は12日夜、東京大学大学院の社会人向けプログラムである「まちづくり大学院」が開催した公開講座で講師を務め、神戸市が昨年条例化を決めた都心地区でのタワーマンション規制について「激論を交わしたことは1回もなかった」と振り返った。「タワマン規制を始めるときに相当な反発が寄せられるのではないかと思ったが、経済界、特に地元で建設をされている方からは大きな反発はなかった」という。久元市長の講義で司会を務めた小泉秀樹教授の質問に答えて述べた。
久元氏は「都心の地権者の中には面白くないと思った方もあったかもしれないが、あからさまな批判は私のところに届かなかった」と話す。「議会での審議でも批判的な意見はほとんどなかった」といい、そのうえで「国会議員の先生方からも、メールやお会いした際に、考え方を理解できるという声をいただいた」「不満はあっても口に出さないということかもしれないが、自分の感覚はそういうところ」と述べ、他分野の政策課題などに比べて合意形成に大きな苦労はなかったことを説明していた。
久元氏は講義の中で、タワーマンションについて「非常に大きな問題をすでに抱えている」と言及。ほとんどの建物で修繕積立金不足が発生しているほか、災害などで多くのタワーマンションで同時にエレベーターが停止するような場合への備えが難しいなど、タワーマンション自体が持つ問題を指摘。さらに短期間に建設が相次ぐと小中学校などの需給がひっ迫したり、長期的には居住者の高齢化が一気に進んだりと地域社会への影響についても指摘した。「いずれにしても地域に問題を突きつけるのが現実」と語った。
東大まちづくり大学院は、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻・社会基盤学専攻・建築学専攻の3専攻を横断する社会人向け教育プログラム「都市持続再生学コース」の通称だ。この日の久元氏は、市内各地にある駅前への人口誘導を中心とした神戸市の街づくり全般について話した。講義はテレビ会議システムを通じて開催し、久元氏は神戸市役所からカメラを通じて話した。同コースを履修する大学院生と一般聴講者の合計200人以上が事前に申し込み、画面を通じて講義に耳を傾けた。(写真は講義時の画面の様子、右側に久元氏)
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