ジョブ型雇用って何?(1)大企業が相次ぎ導入・パーソル総研の小林氏に聞く

20201223小林祐児氏

 「ジョブ型雇用」。仕事の内容を文書で定義した「職務記述書」を明記し、職務等級制度をもとに賃金を決めることを軸にした雇用のあり方だ。新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務が増えたのをきっかけに、より普及が進むと注目度が高まっている。ここにきて職務等級制度・ジョブ型雇用の導入が進む背景や、そもそも現在の人事制度の課題は何か。パーソル総合研究所の小林祐児・上席主任研究員(写真)に聞いた。
(聞き手は編集長 山本学)

 ――「ジョブ型雇用」の導入が進む背景は。

 「職能」つまり職務遂行能力を基準にした、いわゆる「職能等級制度」が現在の日本では賃金体系の中心になっている。職能が高まると給料が上がるという仕組みだ。これは従業員の「能力」に対して等級を決めているので、仕事の内容が直接反映されていない。たとえばプロジェクトマネジメントができる能力、チームを引っ張る能力、経営に助言ができる能力などの仕事にヒモ付かない、抽象度の高い能力が基準になる。いったん獲得した、そうした能力に対して失ったと指摘するのは難しく、結局は年功的に賃金が上昇する。この最大の問題点は、給料が下げられないということだ。

 つまり職能等級制度は組織の高齢化に弱い。現在、団塊ジュニアと呼ばれている50代の比率が高くなり、高い人件費に見合った成果を出せない人が多くなっている。バブル経済崩壊以降、この人件費の制御が効かなくなる仕組みをいかに変えるかというのが経営の大きなテーマになってきた。これが最近になって、ジョブ型雇用の導入という形で一段と目立ってきたといえる。

 ――給与が年功序列で決まることの問題点は、どう整理できますか。

 まず社内の公平性が保てないということがある。従業員の処遇が、現在の成果ではなく、それまでの評価の蓄積に基づいた処遇になってしまうということだ。若手の方にスキルがあって収益貢献が大きくても、給料が急に上がりにくい。これはすごく不公平感が強い。

 次にグローバル化に対応していない、ということ。職能資格制度を中心に組み立てている日本の人事制度は、世界的にみればとても珍しい。企業の世界展開が進み、グローバルに人を育てよう、グローバルに人を採用・配置したい、と考えたときに日本独自の人事制度はとても邪魔になる。国内外で人事制度をそろえようと考える経営者が増えているのも、欧米で多いジョブ型雇用が注目される要因だ。

 また、ビジネス展開の速度が上がり、企業が中途採用を増やしているということもある。社内の人材育成の速度に、ビジネスのスピードが追いつかないと、スキルや機能を備えた人を外部から採用、つまり中途採用することになる。そのとき、職能資格制度に基づく待遇は、その企業の内部の論理でしかない。たとえば、いま市場価値が高いAI(人工知能)を扱える人材を採用して現場に投入したいとき、その人を採用できる給料だと、社内の規則では本部長の仕事をさせなくてはならなくなってしまうが、どうしたものかといった話になってくる。


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