ジョブ型雇用って何?(2)解雇は増えるのか・パーソル総研の小林氏に聞く


 ――ジョブ型雇用が普及すると、解雇が増えると心配する声があります。

 ジョブ型雇用、つまり仕事を基準にした人事制度が主流の国といっても、いろいろある。たとえば英国・米国とその他欧州の国々でジョブ型雇用はまったく異なる。ドイツもイタリアも就業年数は長く、終身雇用に近い。ジョブ型雇用の話になると成果主義や解雇の話がすぐ出てくるのは、アメリカのジョブ型雇用を引き合いに出していると思われるが、アメリカ型は世界を見渡してみると、かなり特殊なジョブ型雇用だといえる。とはいえ日本は、それ以上に異色の人事制度で動いているため、グローバルな人事統一が進む中でジョブ型雇用が脚光を浴びているというわけだ。

 だからジョブ型雇用の導入は、解雇が増えるきっかけには直接結びつかない。すでに日本企業も希望退職の募集で退職を促しており、雇用削減よりも年功的な賃金体系の変更が課題だからだ。ただ大きな変化の実感がなく、じわじわと景気が上向いていたコロナ前の状況は、振り返ってみると民間企業にとって最も人事制度を変えにくい局面だった。新型コロナというインパクトをきっかけに、会社が変わることを示す好機と経営者が捉えるのは当然といえば当然だ。

 ――ジョブ型雇用へのシフトは加速するのでしょうか。

 新型コロナによる在宅勤務の増加などで、人事制度を変えるきっかけが得られたということと同時に、「ジョブ型雇用」という言葉が浸透したのも大きいと考える。これまでは職務や職能など、普通の人にはピンとこない言葉で説明するほかなかった。だが、「ジョブ型」「メンバーシップ型(従来の日本型の雇用)」というわかりやすい言葉を労働政策研究・研修機構(JILPT)の濱口桂一郎氏が名付けたことによって一気に理解が広がってきた。

 一方で見落とされがちな議論だが、日本の雇用はすでに4割ぐらいがジョブ型だ。パート、アルバイトはジョブ型雇用の一種といえる。職務は決まっているし、職務に応じた賃金になっていて、この仕事ならこれくらいの時給という世間的な相場感覚もある。これまでパートやアルバイトを増やして「正社員」という仕組みを守ってきたのが、ついに正社員という中核部分の雇用のあり方にも変革を迫ったのがジョブ型ともいえる。

 思い起こしておきたいのは、ひとくちにジョブ型雇用といっても、いろいろなパターンがあることだ。長期雇用の欧州型ジョブ型もあれば、米国型の成果主義的ジョブ型もあれば、それらとも違うジョブ型もある。働き方、つまり人事制度は必然的に、これまでの働き方に引っ張られる形になり、徐々に変わっていくことになるので、それぞれ自社流のジョブ型、日本型のジョブ型にしかなりようがない。

 ――「日本型」のジョブ型雇用とはどういったものでしょうか。

 日本では、そろそろジョブ型(職務等級制度)と、職能等級制度の中間ともいえる「役割等級制度」の議論を深めておいた方がよさそうだ。職務記述書をあまり厳密でない形で作成する一方で、担っている役割を等級(給料)に反映していくことにする企業も多いだろう。

 実学的な高等教育が発達しておらず、実務型のインターンシップも普及していない日本では、新卒からジョブ型雇用を取り入れるのは多くの企業で難しい。だから若いうちはジョブローテーションさせ、会社の都合で柔軟に人を配置(転勤)するという現在の形は一定、残り続けるだろう。従業員がそれに不満を言わない風土もある。ただ、そのまま終身雇用まで行ってしまうと年功賃金になるので、管理職になったあたりから職務記述書とその成果に基づく処遇に徐々に移行する、といったところが現実的には定着していくとみている。

小林 祐児氏(こばやし・ゆうじ) 1983年生まれ。上智大学大学院総合人間科学研究科博士前期課程修了。NHK放送文化研究所などを経て2015年パーソル総合研究所に入社。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究している。専門分野は理論社会学・社会調査論・人的資源管理論。


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