夢の低燃費タイヤは「トマト」から 住友ゴム、天然ゴム分子の改変に成功

20221017天然ゴム改変

【神戸経済ニュース】住友ゴム工業(5110)は東北大、金沢大、埼玉大と共同の研究チームで、性能を左右する天然ゴム分子の改変に成功した。小さな分子のかたまりである「モノマー」が酵素によって長い鎖状につながれ、「ポリマー」と呼ばれる状態になることで天然ゴムは作られる。住友ゴムなどの研究チームは、天然ゴムの材料である樹液を採取する熱帯植物「パラゴムノキ」が自然に持つ酵素ではなく、トマトに由来する新開発の酵素を使うことで、ゴムの性能を左右するモノマーをゴムに組み込むことに成功した。天然ゴムの性能を制御する技術ににつながり、将来の「夢の低燃費タイヤ」といった超高性能タイヤを作る道を開いた形だ。(図は住友ゴム提供)

 性能を左右するモノマーとは、鎖状に連なったポリマーの端の部分にある「先頭モノマー」と呼ばれる数個のモノマーだ。パラゴムノキが自然に持つ酵素で作られた天然ゴムは、中間部のモノマーと先頭モノマーが異なる分子の集まりであることが知られている(図の「1」)。経験的に先頭モノマーが異なると、天然ゴムの性質を左右することが分かっていた。トマト由来の酵素である「改変トマト由来酵素」を開発したことで、先頭モノマーが存在しない天然ゴム(図の「2−①」)や、もともとの天然ゴムとは異なる先頭モノマーを持つ天然ゴム(図の「2−②」)を作ることに成功した。先頭モノマーを変えることで、ゴムの性質・性能を制御できるというわけだ。

 パラゴムノキを品種改良して、従来の酵素の代わりに「改変トマト由来酵素」を持つパラゴムノキができれば、さまざまな性質・性能を持つ天然ゴムをたくさん作ることができるようになる。ナフサを中心とした石油製品から作る「合成ゴム」だけでは強度が足りず、合成ゴムだけでタイヤが作れないこと考えると、引き続きパラゴムノキが作る天然ゴムへの期待は大きい。住友ゴムなどの研究チームは引き続き研究を進め、2040年代をめどに、高性能の天然ゴムを使った一段の低燃費タイヤ開発をめざすとしている。

 「改変トマト由来酵素」に関する研究成果は9〜12日に米国で開催した学会で発表した。加えて住友ゴムは、現在は熱帯でしか育たないパラゴムノキで、寒さに強い品種などの開発も試み、中長期的な天然ゴムの資源確保などもめざす。

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