(解説)久元市政が目指す、脱「クレクレ体質」 フルートコンクール補助金打ち切り

 久元喜造神戸市長は10月28日の定例記者会見で記者の質問に答える形で、これまで神戸市が主催者に名を連ねてきた「神戸国際フルートコンクール」への補助金を打ち切る理由を改めて説明した。久元氏は、財政の逼迫(ひっぱく)が見込まれる中において、同コンクールへの税金投入は妥当でないことを理由に挙げた。背景として社会保障費など義務的に支出する必要がある費用が今後も増える見通しであることを説明。中長期的には人口減によって市税収入も減少が見込まれる。そうしたなかで「支出にも優先順位をつける必要がある」と改めて強調した。

◆ 神戸市財政、市長「依然として予断許さない」
 確かに近年、神戸市の財政は改善した。市債以外の収入が公債費以外の支出を上回る「プライマリーバランスの黒字」を2014年度まで18年連続で確保。今春には格付投資情報センター(R&I)が同市の格付をダブルA(AA)からダブルAプラスに(AA+)に格上げした。債券市場でも財政の不透明感から、兵庫県、大阪府、大阪市、北海道と並んで、発行する公募地方債の利回りが他の自治体より高くなり、不利な条件での資金調達を強いられた「カオワル5人組」と呼ばれれた状況からは脱却したと言える。

 ただ、久元氏は「神戸市の財政は依然として予断を許さない」と同日の記者会見で述べた。「義務的経費」が膨らんでいるからだ。義務的経費とは医療・介護、義務教育、高齢者福祉や障害者福祉といった個人では対応が難しく、助け合いの要素が強い、避けられない支出のことだ。いわば、行政の中核を占めるこれらの事業での支出が大幅に増えていると久元氏は指摘。例として1993年度から2014年度の21年間の間に生活保護費は365億円から835億円に増加。児童福祉も同期間に158億円から573億円に、保険会計や国保などへの支援も137億円から503億円に増えたと説明した。

 こうなると圧迫されるのは自治体による支出のうち義務的経費と対(つい)をなす「投資的経費」や産業振興などの政策予算だ。まずは道路や橋といった構造物を維持管理する経費はある程度確保する必要があるだろう。交通機関の運営や、上下水道やゴミ収集などの都市機能の維持も欠かせない。文化や芸術に投資することで、街のにぎわいや移住を促すという効果は可能性としてはある。それにしても図書館やその他の教育機関の運営などに比べて、神戸市内に受益者が限られるフルートのコンクールへの支出を削るという判断は的を射ている。

◆ 同様の議論これから増加か
 5000万円ぐらい出してくれてもいいだろう、とフルートコンクールの関係者なら思うかもしれない。ただ今後、神戸市が削らなくてはならない支出はコンクールだけではなくなるだろう。たとえば老朽化が進む神戸文化ホール(神戸市中央区)をどうするか、民間の神戸国際会館(同)もあるのに必要かといった議論も出てくるはずだ。そうした事態になったときに不公平が起きないようにするには、納税者のおカネをどう使うのかを考える際の王道を外れないことだ。

 久元氏は文化・芸術に造詣が深いことで知られる。妻の久元祐子さんは現役のピアニストで数多くの演奏会をこなす。久元氏自身もフルートコンクールについて「それは続けることが望ましいだろうとは思います」と記者会見でも断った。問題は補助金(税金)を投入するべきかどうか、の1点だけだ。この点について、久元氏は感情論を抜きにして「やめる勇気を持つべきだろう」と判断したとみてよいだろう。

 2006年まで続いた小泉純一郎内閣では「民間にできることは民間に」と呼びかけたが、いまだに国の財政再建は果たせていない。国会議員の存在意義が地元への利益誘導だった時代が長かったし、これぐらい補助金を受けてもいいだろうという、クレクレ体質が市民、国民の側にもあるようだ。ただ国からの交付税も臨時財政対策債という形で自治体が肩代わりしなければならないほど、国の財政は切羽詰まっている。

 国の財政が差し迫る中にあっては、自治体の健全な財政が市民生活の生命線になる可能性がある。加えて人口減で今後の税収減が見込まれる中でのフルートコンクールへの補助金打ち切りは、市議が選挙区に誘導できる利益もあまり残されていないことを示したともいえそうだ。いわゆる行政への「口利き」が市議の存在意義にとって事実上重要な位置を占めているのであれば、市議会のあり方にもじわじわと影響するかもしれない。(神戸経済ニュース)

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