(解説)人口は減っても、ともに生きる神戸で 年頭に

 読者のみなさま、明けましておめでとうございます。どうぞ本年も「神戸経済ニュース」をよろしくお願いいたします。

 2016年の神戸経済にとっては、9月に開かれる7カ国(G7)の保険相会合が最大の話題ですが、2月には神戸空港の開港10周年、3月には摩耶駅の開業と交通機関にとっても節目の年になりそうです。交通インフラの充実は都市の住みやすさとも大きく関係しますが、一方で神戸市の人口は減少を始めました。いよいよ福岡市と神戸市の人口が逆転するとみられます。そうした中で、神戸の豊かさをどのように維持していけばよいのでしょうか。年頭にあたり、これまで神戸で働き、暮らす人たちが大切にしてきたことを通じて、改めて考えてみたいと思います。

20160101人口減グラフ

■人口は福岡市を下回り、日本で6番目の都市に

 神戸市は市区町村として日本で5番目の人口を集める都市だ。これが昨年(2015年)10月1日時点で実施した国勢調査の結果が明らかになる2月にも、福岡市に人口で抜かれて日本で6番目の都市に順位が下がる可能性がある。少子高齢化を背景に日本全体の人口が減少する流れに神戸も逆らえないというわけだ。一方で福岡市は九州新幹線の開業などもあって例外的に、周辺の県や都市から人口が流入しているという。中国からの近さゆえ、博多の街に向かう「爆買いツアー」も盛んとあって、経済的に活況であることも人口を吸い寄せる要因のようだ。

 神戸市の人口は緩やかに下り坂をたどり始めた。2012年にピークを打ち、最近では153万人台での推移が続いている。高齢化の勢いは急速で、65歳以上が全体に占める比率は2010年に23.1%だった。阪神淡路大震災が起きる前の1995年には13.6%だったから、神戸市ではお年寄りの比率が1割程度上昇した計算だ。現役世代の働き手が減少することで街の活気がなくなり、社会保障などへの不安感も台頭するとの懸念が広がっている。神戸市は政府の地方創生戦略に呼応する形で、雇用創出などの人口減対策に乗り出した。何も対策をしない場合に2040年には132万人に減る人口を、なんとか143万人程度に維持するため、年間1万2000人の出産数を維持する目標などを立てた。

 ただ、人口減対策は成果が出たかどうかを判断するのには時間がかかる。施策が実際の人口に影響するには、新たに生まれてくる子どもたちが大人になり、さらに子どもを作る世代になるまでの20〜30年程度の時間が要るとの指摘もある。従って、人口減対策とは別に、現在の現役世代が豊かに暮らすための知恵を絞る必要がある。人口の減少に合わせた経済の展開が必要だ。

 兵庫県の井戸敏三知事は昨年12月9日の定例記者会見で、京都市が歴史的経緯から、横浜市や神戸市、札幌市、福岡市と他の大都市に人口を抜かれ続けた例を挙げ「だからといって京都という街の勢いが落ちたかというと、そんなことはない」と指摘した。「神戸の持ち味を生かしながら、神戸らしい街作りをこれからも続けていけばいい」と話す。では、神戸の持ち味とは何なのだろうか。

■世界を受け入れる条件とは、多様性こそ強み

 神戸市中央区北野町周辺。ガイドブックなどで「異国情緒あふれる港町」として紹介される神戸を象徴し、年間110万人の観光客が訪れる観光地だ。その異国情緒の源泉に「神戸の持ち味」のヒントを得ることができるのではないか。

 北野町周辺は観光地であるとともに、海外からの移住者が住む街でもある。神戸市には131カ国、約4万3000人の外国人が住んでいる。なかでも北野には1キロメートル四方の中に60カ国の人々が集まっているという。さまざまな国の人が集まると、どうしても必要になるのが宗教施設だ。北野には80年以上前からイスラム教の寺院がある。このほかユダヤ教、シーク教、キリスト教の各宗派など200近くともいわれる多様な宗教の施設があり、それぞれが共存してきた歴史がある。

 各宗教の施設が周囲と共存する姿勢を表している限り、できる限り排除しないようにするのが神戸の習わしといえるだろう。1935年に日本で最初にできたイスラム教の寺院「神戸ムスリムモスク」(写真は同寺院の夜景)は近隣に配慮し、1日5回ある礼拝の時刻を知らせる「アザーン」の音量は控えめ。夜明け前の場合には館内だけにしか流さない。宗教は生活の一部だからこそ、譲り合って互いに快適に暮らせば誰もが豊かさを享受できるようになるという、文化が衝突する都市の知恵ともいえそうだ。
20160101神戸ムスリムモスク

 日本では神戸にしか寺院がない宗教もあり、礼拝のために神戸を訪れるケースもあるという。特にアジアの成長を取り込むにあたっては、各地に根ざした宗教を受け入れることに対して真剣に取り組む必要があるだろう。そうした動きの芽は出つつある。六甲山スノーパーク(旧六甲山人工スキー場)では今シーズンから、イスラム教徒向けの礼拝所をゲレンデ付近に設置した。マレーシアやインドネシアといったイスラム圏からの訪日観光客が増えていることに対応したという。

 もちろん外国人を受け入れ、共存するのに必要なのは宗教だけではない。神戸市は「ユネスコ・デザイン都市」の活動の一環として、道案内や観光案内として市内に設置しているサイン(標識)の見直しに着手した。日本で生まれ育った人でなくても分かりやすい案内サインの普及は、地元で育った人の快適さも高めるだろう。

■忘れがたい「ベッドタウン」の魅力

 久元喜造神戸市長は「神戸は大阪のベッドタウンになるべきではない」と繰り返し述べている。昨年12月9日の定例記者会見では、人口減少対策としては即効性があるとしても「例えば高層タワーマンションを林立させるような方向性をとるべきではない」との考えを改めて示した。ファッションや音楽などの遊びやゆとり、新しいビジネスといった情報に触れられることが神戸の魅力の生命線だという見方は、神戸の歴史を踏まえた発言と評価できる。その延長線上で実施した英語による市政情報の発信強化は、アジアの成長を取り込むという観点にも沿っている。

 一方で、神戸市内でも三宮以東に「阪神間」の魅力があることは忘れがたい。一定の所得があり、近畿地方全体の消費をけん引する分厚い中間層の存在が、都市としての神戸の魅力を下支えしてきた面もある。明治以降の大阪を中心とした大都市の広がりが、「阪神間モダニズム」といった、港町神戸とはまた違った文化(ライフスタイル)を形成した。芦屋市の一部や、東灘区の御影・住吉といった昔ながらの高級住宅地が現在でも人気なのは、阪神間モダニズムが生んだ豊かさの残滓でもある。ベッドタウンの定義にもよるが、神戸市の人口の23%を占める灘区と東灘区が持っている住宅地としての魅力は神戸とは切り離せない。

 三宮以東には1995年の阪神淡路大震災以降、甲南山手、摩耶とJR神戸線の2つの新駅ができたのが、これを象徴する。全国的にみても高く評価された住宅地を抱えていることは、神戸の強みでもある。住宅地こそ美しい街並みが求められ、その1つのモデルが現在の神戸だ。さらに今後増えるとみられる中国や東南アジアの多国籍企業が、日本での拠点を神戸や大阪に構えるとすれば、本国からの駐在員らの住まいに阪神間を考えるだろう。そのとき、新たな住民が以前からの住民に無理なく溶け込めるような風土があれば、神戸は世界的にみても評価の高い住宅地になれるのではないか。老いも若きも、男も女も、国籍や宗教などにとらわれず、互いを認め合い、ともに生きる自由な空間こそが、経済都市としての神戸の魅力にもつながるに違いない。(神戸経済ニュース)
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