(解説)神姫バス、豪華バスで「瀬戸内」掘り起こしへ 神戸空港の国際便も意識
- 2024/03/21
- 03:29
【神戸経済ニュース】バス兵庫県内大手の神姫バス(9083)が4月15日から新造した豪華バス「YUI PRIMA OLIVIA(ゆいプリマオリビア)」(1枚目の写真)を投入して始める瀬戸内を巡るツアーでは、瀬戸内のさまざまな観光資源を掘り起こし、世界的な観光地として売り出すことをめざす。3泊4日で28万円(ホテルを2人1部屋で使う場合の1人分)は強気の価格設定に見えるが、中四国のバス会社との連携も視野に内容を充実させる。瀬戸内なら、京都でなくても日本らしい日本を体験できる内容にできると自信をのぞかせる。
7日に開催した報道機関向けの説明会で神姫バス長尾真社長(1枚目の写真左=バスをデザインした水戸岡鋭治氏と)は、瀬戸内の豪華バスツアーで3つ実現したいことがあると強調した。まず「世界的な観光地としての瀬戸内の発信」だ。穏やかな内海に多くの島が浮かぶ風景は世界的に見ても珍しく、何より美しい。特に日の出や日没は幻想的だ。豊かな自然環境に支えられ、瀬戸内の各地に育った文化を背景に、日本らしい史跡や名勝も点在しており、訪日客を呼び込むことで長尾社長が2番目に実現したいという「京都・大阪のオーバーツーリズム(観光公害)の解消」にもつながりそうだ。
3番目に実現したいというのは「姫路城、原爆ドーム、宮島の3つの世界遺産を結ぶことで、瀬戸内の観光の経済圏、経済連携を作る」こと。中四国にある「同業のバス会社が販売している商品を私どもで販売し、みなが潤うような連携を図っていければ」と構想する。地元のバス会社が販売する、知る人ぞ知る観光資源に訪日客をつなぐ動線になりたい、というわけだ。そのために、年内にも豪華バス「オリビア」を一般バス化して停留所で乗り降りできるようにし、乗客が組み立てたプランで観光地を自由に回れるようにしたい考えだ。
一般バス化によって閑散期でも、神姫バスの系列旅行会社が主催するツアー客以外の乗客で、空席を埋められるといった期待もできそう。「オリビア」は東の起点を新神戸駅、西の起点をJR広島駅に設定して運行。しまなみ海道(2枚目の写真=資料)などを利用して四国にも立ち寄る行程だ。「来年から神戸空港が国際チャーター便を受け入れるのは当然、意識している」。瀬戸内の掘り起こしは、関西3空港懇談会が神戸空港に求めた、まさに神戸以西の需要喚起そのものだ。むしろ「これが神戸空港に国際チャーター便を呼ぶタネになれば」と長尾氏は話していた。
先進国の環境意識が高い乗客を想定することもあり、二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロで「オリビア」運行する枠組みを作ったのも、長尾氏の「気合い」をうかがわせる。バスは三井住友ファイナンス&リース(SMFL、大阪市中央区)が保有し、同社が住友商事(8053)からJ-クレジット制度でCO2排出削減量を購入。バスの運行を担当する神姫観光とSMFLの間では「排出権付リース」の契約を結んだ。SMFLが購入するJ-クレジットは「オリビア」が運行する地域内で発生した「森林吸収由来」と、あくまで瀬戸内にこだわった。(2枚目の写真は来島海峡としまなみ海道=資料)
(神戸経済ニュース編集長 山本学)
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