(解説)円安に転機、日銀「動けず」でも米利下げなら… 株2日で1100円下落

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【神戸経済ニュース】1ドル=151円台後半まで下落した今夏以降の超円安にも転機が訪れた。7日のニューヨーク外国為替市場で、1ドル=141円台後半まで円相場が急伸したのは、その瞬間だった。日銀が金融政策の据え置きを迫られる中、米国はインフレ対策で利上げを継続。日米の金利差が拡大することで、金利が高く資金運用により有利な環境になった米ドルに、投機筋が日本円から資金を移すのが円安の背景だった。このシナリオが通用しなくなったのを、改めて確認した瞬間だったともいえる。

◼️米利下げ観測でドル売り優勢に
 それまでにも円高・ドル安の動きはじわじわと進んでいた。米国ではインフレの鈍化が鮮明になったとの見方が広がり、米連邦準備理事会(FRB)の幹部からも利上げの打ち止めを示唆する発言が相次いでいた。さらに米景気が減速、悪化するとの見方も台頭し、早ければ米国では来年前半にも利下げに転じるとの見方が浮上。パウエル米FRB議長は12月1日の講演で、早期利下げ観測について「議論は時期尚早だ」とけん制するほどになっていた。その後も消えない米利下げ観測が足元の円買い・ドル売りの誘因だ。

 141円台への円相場の上昇の引き金になったのは、日本の金融政策の当局者である日銀の植田和男総裁が7日の参院財政金融委員会で、金融政策運営について「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言したことがきっかけ。植田氏の発言は日銀が金融政策の正常化に動く、つまり短期金利をマイナス、長期金利を0%程度としている誘導目標を、金利がプラスの状態に戻すのではないか、との思惑を誘った。このため米国では利下げ、日本では利上げと政策の方向が逆向きになり、日米金利差の縮小が加速するとの見方につながった。

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 日本は現在、実際の経済成長が潜在成長率(中長期的に持続可能な経済成長率、経済の実力に相当する)を上回る成長率で推移しているとの見方が多い。つまり好景気ということだ。だから銀行貸し出しの厳格化などにつながる金融引き締め=金融政策の正常化の思惑も出てくる。しかし米国が利下げする局面の経済情勢とは、どういう状況だろうか。米国の景気悪化は、いろんな経路で日本経済にマイナスの影響があることはいうまでもない。日本の最大の貿易相手国が米国から中国に移って久しいが、中国は欧米への輸出で稼いでいるという面もある。

◼️日銀が動かずとも日米金利差は縮小か
 本当に米国に利下げが必要になるほど景気が悪化すれば、日本で金融政策の正常化など難しいだろう。日銀はマイナス金利の幅を広げるなど、再びさまざまな小技を使って金融緩和を演出するに違いない。ただ、それでも円高は進む可能性が高いということだ。なぜなら銀行間市場や債券市場など、中央銀行の影響力が強い市場以外では、金利をゼロより低くするのが難しいからだ。たとえば銀行預金の金利がマイナスになることはないだろう。総じてみれば、日本の金融市場では金利が最下限まで下がっている以上、米国が利下げすれば日米金利差は縮小せざるを得ない。

 輸出企業が時価総額の大きなウエートを占める株式市場では、企業の業績に対して楽観的な見方が多いとされてきた。想定以上の円安で、海外での収益が上振れするとの期待感は根強い。ただ、植田総裁が「チャレンジング」と発言した7日と翌8日の2日間で、日経平均株価は1100円超の下落。改めて「もう円安は来ない」とばかり円相場の方向転換を意識した動きになった。一方で円安が一服すると、日本では輸入物価の上昇も収束する。それだけに国内個人消費の動向、加えて訪日客の流入が続くかという消費動向には、国内景気を見極めるうえで一段と関心が集まるだろう。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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