(解説)優勝パレード、クラウドファンディングとの相性は? 1億円強で終了

20231123パレード式典

【神戸経済ニュース】阪神タイガースとオリックス・バファローズの優勝記念パレードの実行委員会が11月30日まで実施した、パレードの開催費用を集めるためのクラウドファンディングは失敗だったのか--。目標額とした5億円に大きく届かなかったことで、パレードの開催を危ぶむ報道も一部で出ていたが、11月23日にパレードは無事に開催された。大阪の職員ボランティア問題などもあったが、ともあれ公金を投入せずにパレードを開催できた大阪・兵庫の両知事に加え、実行委の会長を務めた松本正義・関経連会長の手腕、営業力は評価してよいだろう。ただクラウドファンディングでは、いくつか論点も浮き彫りになったのでまとめておきたい。

◼️1億円超の寄付が集まる
 実行委員会が実施したクラウドファンディングでは、11月30日に寄付を締め切ったところ1万3337人が寄付に参加し、1億0418万円が集まった。1万人規模の大人数が実際に行動を起こして、1億円超を集めたのは、公平にみて成果というほかないだろう。目標を「5億円」とパレードの開催費用と同額に設定したことで、開催費用の全額をクラウドファンディングでまかなうと勘違いした記者が複数現れた影響が一部で広がった、というのがパレード開催を危ぶむ報道の実態といえよう。集めた資金から返礼品であるオリジナル優勝記念グッズの制作費用も出すので、仮に5億円を集めてもパレードの費用が全額まかなえるわけでは最初からなかった。

 ただ、パレード開催のために寄付をしたいと思ったファンが、どれほど返礼品をほしいと思っていたかは未知数だ。球団の公式記念グッズなどを既に入手していたファンにとって、返礼品は不要の可能性が高い。寄付した金額が全額、パレードに投入されるなら寄付をしてもよいと思ったファンもいただろう。実行委員会を構成した兵庫県によると「寄付額の30%前後が返礼品に回るよう設計した」(県民生活部総務課)という。システム利用料は一般に集めた金額の1〜2割とされており、実際に警備などのパレード開催費用に回るのは寄付額の半分程度とみられる。ふるさと納税でも同じだが、返礼品がかえって寄付の意欲を削(そ)ぐケースもあるという、クラウドファンディングの特性を改めて意識させた。

◼️実は「準公式グッズ」だった返礼品
 その表裏でもあるが、返礼品に関する広報には工夫の余地があったのではないか。返礼品をどのように調達するのか実行委員会に聞くと、「球団に発注するか、もしくは球団が指定する業者に発注する見込み」(兵庫県の県民生活部総務課)ということだった。グッズのデザインなどは実行委ではなく、両球団が提示したものだという。つまり実行委と両球団がもう少し交渉して、返礼品が「準公式グッズ」などと位置付けられた場合、クラウドファンディングの返礼品に対する注目度はもっと上がっただろう。返礼品の「出自」はもっと明確にしてよかったといえそうだ。

 兵庫県の斎藤元彦知事は、クラウドファンディングが目標額に届かなかったことについて記者会見で聞かれ、「反省すべき点は反省」と話していた。だが、もともと目標額に到達するか無関係に寄付を受け取り、事業を実施する「オールイン形式」であることは宣言していた。目標額に届かなかったことは実は問題ではない。100億円を集めると目標をぶち上げても、結果に大きな違いはなかっただろう。2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)の機運向上と抱き合わせになったのが反発を招いたとの説もあるが、博覧会の話は途中から出なくなったので大きな関係は考えにくい。

◼️「事業資金は寄付の半分」どうみる
 とすれば反省すべき点の1つは、何に対して集金するのか明確にできなかったということではないか。返礼品に価値があるのか、パレード開催に価値があるのか。事業と返礼品との間の整合性や関連性は検討の余地があったとみられる。単に優勝記念グッズというだけでなく、優勝パレードが開催されなければ入手できない返礼品を打ち出すことができれば、結果は変わっていたかもしれない。たとえばクラウドファンディングで寄付した人の専用観覧席などが考えられた。

 もう1つは費用対効果だ。クラウドファンディングは、みずから新たにシステムを立ち上げる必要もなく、目的が明確であれば短期間で準備が可能で、利便性は高いようだ。それにしても集めた資金の半分しか事業に投入ができないとすれば、さすがに高コストに思えるがどうだろうか。今回、実行委が利用したのとは異なるクラウドファンディング会社では、「新しい製品やサービスのテストマーケティング」と、みずからのサービスを再定義することで、集まった資金で取り組む事業と返礼品の内容を一致させた。クラウドファンディングをどう使うのがスマートなのかという点でも、学びがあったように思う。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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