(解説)ナイトタイムエコノミーの需要がそこに 神戸医療産業都市の課題とは?

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【神戸経済ニュース】13日夜に神戸市が開催した「KOBEナイトタイムエコノミーフォーラム」での議論は、パネリストが「神戸市は、訪日外国人観光客の需要獲得で京都や大阪に負けている」と行政の責任を追及し、久元喜造市長が「京都や大阪のオーバーツーリズムは理想的なのか」と反論するという、正直に言ってもはや聞き飽きた内容だった。しかし、よく理解できたのは神戸の中心市街地にある飲食店を中心とした「ナイトタイムエコノミー(夜の経済)」の主体は、経営が厳しいと感じているということだ。

 要因はいくつか考えられるが、要するに産業構造や消費者の嗜好(しこう)の変化に飲食店が追いついていない、ということだ。産業構造の変化とは、バブル経済崩壊以降、神戸市に本社を置く大企業が消滅したり収縮したことによる、社用族を含めた従来の常連客の減少。そして消費嗜好の変化とは、おおまかに言うと「お酒は上司に連れていってもらう」から「好きなお酒を気の置けない人と飲む」への変化だ。

 神戸のナイトタイムエコノミーがさえない理由に、神戸市の人口減少を指摘するのは誤りだ。神戸市全体の人口は2010年まで増えていたし、飲食店が集まる中央区のほか、灘区や東灘区の人口はいまでも増えている。新たな顧客を取り込めていないことの原因は、ナイトタイムエコノミー側というか飲食店にあると考えるのが自然だ。

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 ナイトタイムエコノミーが本来取り込むべき顧客は誰なのか。たとえば神戸で1990年代のバブル経済崩壊後、とりわけ1995年の阪神淡路大震災後に神戸市で集積した産業は何かを考えると、すぐに思い当たるのは神戸医療産業都市だろう。ポートアイランドを中心に350を超す企業や団体が進出し、そこで働く人の数は1万2000人を超す。ナイトタイムエコノミーフォーラムが開かれた、まさに同じ13日の午前中に話し合われた「神戸医療産業都市の課題」で、相次いで指摘されたのは「横のつながりができない」ことだった。

 神戸医療産業都市の課題はいろいろあるが、総じてみれば「都市」として機能しておらず、いわば「神戸医療産業団地」にとどまっているということだ。ただの集積地に近い状況で、立地する企業間で相乗効果を出せていないのが現状との見方が多かった。これは、ここ10年ほど継続的に指摘されていることで、長らく解決策が見出せていない。「横のつながり」の創出をめざして神戸市が21年に開設したのが阪急神戸三宮駅の駅ビルにある「アンカー神戸」という「知的交流拠点」だった。

 とはいえ、そうした公式の場で偶発的な出会いなど起きようはずもない。必要なのは臨床医と医療機器メーカーの研究者が偶然となりに座ってケンカしたり、細胞の研究者と商社マンが偶然となりに座って意気投合したり、ありていに言えば感情をぶつけ合うことだ。そこに必要なのは、どう考えても酒場なのではないか。人間関係をよく知っている居酒屋の女将やバーテンダーが都市のキーパーソンになることは、よくあることだ。「神戸のバーテンダーは口が固い」という情報発信は必要かもしれないが、ナイトタイムエコノミーが神戸医療産業都市を取り込むことで、神戸医療産業都市は初めて「都市」になるといえるだろう。

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 新型コロナウイルスの感染拡大以降、酒を飲む場所は職場の近くから自宅の近くに変化したので、これまで大阪で飲んでいた人を神戸で取り込むことも、本来はできたはずだ。そうした新たな顧客を獲得するために、飲食店の各店がぞれぞれ自らリスクを取って動く必要があるということだ。看板を出して客を待つという、これまでの商売のやり方は通用しなくなっている。まずはポートライナーの医療センター駅前で、昼の弁当でも売ってみてはどうか。「神戸医療産業都市の研究者は、こんなにお洒落な昼ご飯を食べている」「作るのはバーテンダー」。実現すれば、すぐに全国的な話題になるだろう。NHKの「サラメシ」が放っておくわけがない。(写真1枚目は神戸の夜のイメージ、2枚目と3枚目は飲食店のイメージ=いずれも資料)

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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