(解説)シスメックス株、下げ止まらず 期待先行が「機器販売鈍化」で一服?

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 シスメックス株(6869)の下げが止まらない。東京株式市場で7月24日に1万940円の戻り高値を付けた後は上値が重くなり、そのまま8月に入って9日まで9日続落した。この間、3日に2018年4~6月期の連結決算を発表して下げが加速。続落した9日間で株価は約16%下落した計算だ。6月25日には上場来高値の1万1110円を付けたが、こうした期待先行で株価が上値を追う展開は一服したとの見方がちらついている。

 3日に発表した決算の数字自体は、必ずしも悪いと言い切れる内容ではなかった。4~6月期の純利益(国際会計基準)は前年同期比15%増の94億円と、同社が示した上期予想の2分の1に届かなかったとはいえ進捗率でいうと47%。50%から3%下回った程度なら、誤差の範囲内といえなくもない。一方で、2019年3月期通期の業績予想は据え置き。買い材料とされた今期の予想数値は、達成可能と自信をのぞかせた形だ。

 だが株式市場が注目したのは、増益になった要因のほうだった。主力の血液検査機器は海外で販売が減少。国内でも赤血球などの数を数える血球計数検査分野の機器販売が減少した。これまでに販売した機器への検査試薬の補充が、収益の支えになったという構図だ。同社が機器を普及させてきた果実を受け取った形だが、これが逆に市場の成熟を印象付けたとの指摘が聞かれた。シスメックスの高い株価を正当化してきた、成長期待の大きさが揺らいだというわけだ。(写真はシスメックスの本社が入居するビル=神戸市中央区、資料)

20180809シスメックス本社

 これが、複合機やファクシミリの販売が伸び悩んでも、カラートナーなどの消耗品で収益が拡大するとしていたキヤノン(7751)やリコー(7752)など事務機メーカーの姿と「二重写し」になった。市場が飽和に近づいて単価の高い複合機の販売が伸び悩むと、「結局は収益が悪化した、ここ数年の事務機メーカーと同様の展開になるのではないか--」。そうした疑念が投資家の一部にくすぶり始めたという。

 シスメックスの株価を1株利益で割り算したPER(株価収益率、今期予想ベース)は45倍程度。株価は45年分の利益を先取りしているという計算だ。東証1部の全銘柄(14倍台)や日経平均株価(13倍台)を大きく上回るのは、同社の成長期待を織り込んでいるため。一方で同社が「ネクストコア」とする次世代の成長分野の売上高は全体の4%程度。まだ同社の収益のけん引役になるには力不足だ。引き続き収益の核になる検査機器の販売減は一時的なものなのか。同社の高いPERを正当化する成長期待をどう支えるのかという観点で、株価も正念場といえそうだ。(神戸経済ニュース 山本学)

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