(解説)世界パラ陸上(上)中長期的な経済波及効果も、21年9月に神戸開催

 国際パラリンピック委員会(IPC、本部・独ボン)は、2021年9月に10日間の会期で開催する「世界パラ陸上競技選手権大会」の開催地に神戸市を選んだ。東アジアで初めての世界パラ陸上だ。誘致に向けて圧倒的に有利な状況で神戸市が立候補できた背景には、東アジアでも大会を開きたいというIPCの意向もあったとみられる。選手や役員に加えて、述べ10万人の観客が予想されており、経済波及効果への期待もかかる。さらに高齢化が進む中での福祉に対する影響力の増加が、神戸経済全体にとって中長期的に寄与する可能性もある。(写真はメーン会場になる神戸市須磨区のユニバー記念競技場=資料)

20190503ユニバー記念競技場

 神戸が開催地として立候補することになったきっかけは、IPCがアシックスに日本での世界パラ陸上を打診したことにある--。ある関係者は、こう打ち明ける。最初にIPCが打診したのは17年の後半だったという。その後、アシックスから内々に情報提供を受けた神戸市が情勢調査を始める。18年の2月と8月にはIPCの役職員が来日し、ユニバー記念競技場を中心に施設を視察。大規模な改装を加えずに施設を利用できることを確認した。18年7月からはアシックスがIPCの公式サプライヤーに就いたことで、アシックスを介して神戸市とIPCの間では、より情報が行き来しやすくなったという。

 世界的にみて国際スポーツ大会の担い手が減りつつある中で、最終的に神戸市が世界パラ陸上に立候補を表明した18年12月、対抗馬はフランス・パリだけだった。すでにフランスでは02年、13年と2回開催。しかも24年にはパリ五輪・パラリンピックを開催する予定だ。障害者(パラ)スポーツ運動の精神からみても、パリばかりで開催しても仕方がないとあって、IPCが未開催の日本で世界パラ陸上の開催地を模索するのも無理はない。そして神戸は1989年に極東・南太平洋障害者スポーツ大会(フェスピック)の経験もあり、アシックスの本拠地でもある。満を持しての立候補だったといえる。

 経済波及効果としては、選手の来日や観客動員などに目先の関心が向かいそうだ。バリアフリー関連の競技場の改修は、1億円かからないもよう。神戸市は老朽化した補助競技場のトラックの改修費用など2億5500万円を19年度予算に計上したが、大会に使用するインフラは原則として過去に開催した国際大会のレガシー(遺産)を活用し、大きな建設計画はない。このため約100カ国から参加する選手約1400人、役員約800人に加えて1日に1万人と見積もる観客を、どう観光に誘導するかといった点が当面の焦点か。

 一方で見逃せないのは、神戸はスポーツ産業の集積地であると同時に、障害者福祉と密接に関わる医療産業の集積地だということ。今年10月には義手や義足といった義肢装具の国際学術会議「第17回国際義肢装具協会世界大会」(ISPO2019)も予定されている。同時に最新の介護・医療ロボットなどの見本市も開かれる予定だ。神戸医療産業都市から新たに投入できる技術やサービスがあれば、今秋にも発足する見通しの大会組織委委員会に、積極的に提案してみてはどうか。障害者が暮らしやすい街として世界に追いつき、追い越せるのであれば、関連産業の一段の集積にもつながるだろう。
(神戸経済ニュース 山本学)=(下)に続く

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