(解説)4〜9月期決算、上方修正4割も「供給制約」懸念 隠れ下方修正に市場反応

20211122上期決算まとめ

【神戸経済ニュース】神戸市に実質的な本社を置く株式上場会社の2021年4〜9月期決算発表では、集計対象にした32社のうち9社が22年3月期の業績予想を上方修正した。9月以降に通期予想を上方修正した3社も加えると、4割近くの会社が上方修正した計算になる。だが収益の拡大基調が続くか、懐疑的な見方が多いのも浮き彫りになった。新型コロナウイルスの感染拡大が一服し、経済活動の再開が進むなか、5社が業績予想を下方修正。業績予想を据え置いた会社も「供給制約」への懸念を強めている。

 食品の専門商社である石光商事(2750)は12日、2022年3月期の連結営業利益が前期比22%増の11億円になる見通しを発表した。従来予想の8億8900万円から上方修正した。しかし翌営業日の株価は急落。新たな通期予想から上期実績を引いて算出した、下期の営業利益予想は5億3200万円だ。従来の通期予想から上期予想を引いた6億4200万円に比べ、下方修正していた。コーヒー相場や海上コンテナ運賃などの高騰による影響が今後大きくなる「隠れた下方修正」を、市場は見逃さなかった。

 配合飼料の日和産業(2055)は通期の連結純利益が前期比2.2倍の3億円になる予想を据え置いた。上期の純利益は3億2600万円で計算上、下期は最終赤字になる想定と、市況の先行き不透明感をあらわにする。最も想定外だったのは川崎重工業(7012)の下方修正だろう。通期の連結最終損益が150億円の黒字(前期は193億円の赤字)になる見通し。従来予想は190億円の黒字だった。関連会社である中国の造船会社で、鋼材価格の上昇などを受けて収益が悪化したのが主因だ。

 同じ時期に1〜9月期決算を発表した会社では下方修正が相次いだ。住友ゴム工業(5110)は半導体不足による自動車の減産と、海上コンテナ不足による運賃高騰の両方が逆風と、供給制約のダブルパンチを食らった。ノーリツ(5943)は、東南アジアでの新型コロナ感染拡大が影響して商品供給に遅れが出た。加えて今後は自社で部品として使う半導体の確保が不十分になる影響が、高まるとみる。タイヤ(自動車)も給湯器も消費者の需要はあるのに、十分に供給ができないという歯がゆい状況。まさに供給制約の実情といえる。

 困ったことに原油高・資源高も含めた広い意味での供給制約は、いつまで続くかという予想がきわめて難しい。海上輸送の混乱は米国でクリスマス商戦が一巡すれば落ち着くとの予想もあるが、それだけが理由ではなさそう。半導体は、受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)などが増産投資を進めるが、短時間での大幅な生産能力拡大は難しいという。それに、実際に懸念した通りの影響が出るのかも未知数だ。供給制約を巡る企業や市場の疑心暗鬼が当面続くのは、やむを得ないだろう。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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