(解説)2年半で感じる社会実装 「078KOBE」三宮の各地でリアル行事
- 2021/11/08
- 04:06
振り返れば19年にAR(拡張現実)技術を体験したのは、展示ブースの中だった。専用のゴーグルを着用すると、実際にはない建物が視界に現れたり、それを動かすことができたり、といった内容だった。実際の風景と、実際にはない何かを同時に見る、という根本的な動作は変わっていないのに、今回の体験ではそれが観光案内に使われたほか、商店街が海底になる(1枚目の写真左)といった、より実際の生活に近い場所での体験へと変化した。
この2年半に何が変わったのだろうか。実際の視界に観光案内を追加して、ガイドブックを持たずに街歩きを楽しむ「未来の観光案内」を北野の異人館街で運営した、NTTドコモのメンバーに聞いてみた。まず複数のメンバーが指摘したのは「デバイス(装置)の進化」だった。2年半前の専用ゴーグルは見た目にも大仰だったし、価格も数十万円と高価だった。1年ほど前に発売されたのは、外見がかなり普通のサングラスに近づいた(1枚目の写真右)。価格も5万円近辺まで下がった。「外に持ち出してもよいかな、というデバイスになった」わけだ。
次に、社会実装のための工夫も進んだ。技術的に可能なことをすべて盛り込もうとすると、たとえば法的に未整備の分野に突き当たる。そうした障壁をどう回避するか。また通信速度の観点から、屋外で使える現在主流の4G携帯電話の通信速度で利用できるまで情報量を抑えるといった、「現時点ではこの程度」といった、技術のダウングレードも使われている。もう1つの要因は、開発コストが下がったことだという。新分野を扱える技術者が増えたため、開発にかかる時間も短縮された。
さらに新型コロナの感染拡大で、多くの人がテレビ会議システムに親しんだというのもあるようだ。今回は神戸・三宮の店舗4カ所で、「バーチャ・スタッフ」のデモンストレーションを実施。神戸電子専門学校(神戸市中央区)の学生が店舗から離れた場所で、来店客に呼びかけて商品を案内した。顧客からみると、商品説明するのはアニメ風のキャラクターとはいえ、画面の向こうの人と話すことへの違和感が薄れた面があるようだ。感染対策の強化で「対面販売ができない場合に使えれば」(ナガサワ文具センターの裏川達也氏=2枚目の写真)という。
結果として都市生活を考えるイベントを、都市のど真ん中で開催することに成功した。都市はもっと便利になる。一方で、都市の中に雄大な大自然を重ね合わせて、違った都市を作り出すこともできる。そうした原動力に人と人の出会いがあるし、人と技術の出会いもあるのだろう。着実な技術の進展を確認するとともに、都市生活についてまじめに、同時に気楽に考えるイベントが人や技術の出会いの旗印になることも確認できたのではないか。今回の新たな出会いをきっかけとして、次の「わくわくする何か」にも期待できる2年半ぶりのリアルな行事だった。
(神戸経済ニュース編集長 山本学)
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