神戸ABCの旅(10)「J」十二間道路

●第10回 「J」十二間道路(じゅうにけんどうろ)

 シリーズ「神戸ABCの旅」の第10回です。神戸の地名をアルファベット順に1カ所ずつ訪ねていくうちに、長らく離れていた神戸の土地勘も戻るのではないかという企画ですが、実に1年と10カ月ぶりの更新になります。土地勘が戻るも何も、新型コロナウイルスの関係でウロウロできない日々が続いたのが非常に残念でした。ようやく緊急事態宣言も、まん延防止等重点措置も全面的に解除されたし、ワクチン接種も2回済んだし、落ち着いて更新していこうと思います。「A」から「Z」まで、月に1回ずつ更新しても2年ほどで終わるはずだというのに、2年近く休んでしまいました。改めて、お付き合いください。

 中島らも(1952〜2004)の最初に単行本になった著作「頭の中がかゆいんだ」(1986)には「東住吉のぶっこわし屋」という短編小説を収録しています。その舞台である「十二間道路」があるのは彼の母校である灘高からもほど近い神戸市東灘区です。上司が自慢の自動車を酔っ払いに壊される、というだけの話なので、舞台として広さの割には比較的交通量の少ない十二間道路はちょうどよかったのでしょう。ただ東住吉というのは一般的な呼び方ではありません。十二間道路の北端はいわば「西岡本」なのですが、車を壊す酔っ払いと、神戸市でもっとも地価が高い瀟洒(しょうしゃ)な住宅地である岡本が合わなかったのだと思われます。

20211017始点
ここから右が「十二間道路」という標識

 十二間道路は南北の道路。北端は山手幹線に接続しています。十二間は換算すれば約22メートルということで、幅の広い道路という意味で付けられた名前でしょう。片側2車線で4車線ある道路です。実は十二間道路という道路があるのは神戸を離れる前、中学のころから知っていました。というのも十二間道路の北端の近くには当時、通っていた塾があったからです。当時は思いもよらなかったわけですが、十二間道路はどこまで続いているのか。また十二間道路の先には何があるのか。というわけで、十二間道路の北端から南下してみることにします。

20211017セラーハウスプラス
「呑み放題メニュー」(左)は季節で変わるそうです。右はお店の外観

 山手幹線から歩き始めて、すぐに現れるJRのガードをくぐると、「店頭で楽しむお酒」「呑み放題30分500円」という刺激的な文字が、目に飛び込んできます。立ち寄ることに迷いはありません。酒屋の店頭でちょっと一杯という、いわゆる「角打ち」的な展開です。しかし岡本ともなれば、角打ちもワインが10種類以上。スパークリングもあります。食品や酒類を卸売りするカネキ酒販(神戸市中央区)が出店している小売り専門の店舗「セラーハウスプラス」です。飲み放題にはワインのほか日本酒もあり季節によって銘柄が変わるそうです。舶来のこじゃれたおつまみも別に買うことができて、1人で飲むなら30分でも十分に楽しい。また来ますわ。

20211017田中町
静かな住宅街の間を南北に抜ける十二間道路

 後ろ髪を引かれながら旅を急ごう。先はまだ長い。さらに南に下って国道2号線まで来れば、田中町の交差点の角にあるのが「鈴木商店」です。かつては神戸を拠点に手広く事業を展開し、大正時代には「三井、三菱と天下を分ける」といわれた鈴木商店と、たまたま同じ名前ということでした。以前は食堂で、中島らものエッセイ集「僕に踏まれた町と僕が踏まれた町」には、中島らもが友人らと学校帰りに食事したシーンが登場します。いまは、昔ながらのアイスキャンディーを販売する店として評判ですね。最初に訪れた際、すでにアイスは売り切れていたので後日、改めて買いに向かいました。1本80円から。なつかしい、素朴な味です。

20211017鈴木商店
カルピス味(左上)とミルク味(右上)はどちらも80円

 さらに南下すると右側には餅菓子で著名な「ナダシンの餅」の甲南店があり、窓の配置が面白いビルがあったりします。びっしり並んでいるわけではないけれど、お店はたくさんある印象。阪神淡路大震災での被害が大きかった地区であったかとは思いますが、新しい店に混じって意外に年季の入った店も多そうで、少しほっとします。コーヒー豆の会社もあって、食品関係は比較的多いかもしれない。産業全体に占める食品のウエートが高いのは神戸の特徴で、東灘区はその傾向が一段と強いのが表れているようにも見えます。

20211017ナダシンとマンション
窓の配置がユニークなビル(左)と「ナダシンの餅」甲南店

20211017グランド楽器
チューバがずらり並ぶ店内(左)と楽器店らしい看板(右)

 「グランド楽器」という一見、不思議なお店がありました。ヤマハの看板が上がっている楽器店なのに外から見えるのは、ずらりとチューバばかり。たまたま店先に出られていた営業部長さんに「チューバの専門店って珍しくないですか?」と聞いてみると、別にチューバだけを取り扱っているわけではないとのことでした。木管楽器も含めた管楽器全般を扱っていて、中学や高校の吹奏楽部などが主な販売先だそう。簡単な修理もお店でできる、ということでした。ただ、店頭で試奏できることがほとんどない大型の管楽器には力を入れていて、本場ドイツはじめ欧州から取り寄せている楽器もあり、それを目的に遠方からでも訪れるお客さんがあるそうです。金や銀で作る「フルートに比べるとたいしたことはない」とはいえチューバは安くても100万円から。ということは、店頭に並んでいるだけでも数千万円(!)になる計算。すごい。

20211017終点
ここから左が「十二間道路」という標識。誰が魚崎幹線やねん

 そんなこんなで「これは最近まで踏切だったのか」などと思いながら阪神電車の高架下を通過すると、十二間道路も終点という標識が現れました。十二間道路は山手幹線と国道43号線を南北に結ぶ道路だったのか。神戸都心と大阪を結ぶ鉄道は山側から阪急、JR、阪神と3路線ありますが同様に……でもないけど道路も3路線が計画されました。山手幹線、中央幹線、浜手幹線の3路線です。この周辺では中央幹線は国道2号線、浜手幹線は国道43号線がこの計画に重なっています。十二間道路は、この東西3幹線を南北に結ぶ道路で、3幹線のどこかが通行止めなどになった場合に大活躍する道路ということでしょう。調べれば正式名称は魚崎幹線ですが、そんな名前で呼んでいる人はいません。そもそも「十二間道路」って標識に出てるし。静かな住宅地の真ん中を通り抜ける堂々とした道路。車をぶっ壊しそうな酔っ払いなど、まあ見る影もありませんでした。(神戸経済ニュース編集長 山本学)

 お断り 取材は7月23日でしたが、その後すぐに新型コロナのまん延防止等重点措置が適用、続いて緊急事態宣言が発令されたのでいったん掲載を見送り、10月17日にグランド楽器などを追加取材したうえで掲載しました。

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