(解説)水道民営化は時間をかけてでも議論を 広域化・国際化にはメリット

20210823千刈ダム

 神戸市の久元喜造市長が14日に短文投稿サイトのツイッターで「神戸市はカジノはやりませんし、水道の民営化もしません」と述べたことを、評論家の八幡和郎氏が批判している八幡氏は、同じライフラインである電気やガスはすでに民間企業が運営しているのに、水道が民間企業にできないはずはないという。実に明快な指摘であり、当を得ていると言わざるをえない。常識的に考えても、とりわけ企業が事業活動に利用する工業用水などは、公営水道でなくてはならない理由は見当たらない。それ以前に(「背信」と言い切るべきかは置くとしても)、たいした議論を経ることもなく水道民営化という選択肢を将来にわたって否定する権利は、当然のことながら現職の市長にもない。(写真は神戸市の水源の1つである千刈貯水池の千刈ダム=神戸市のホームページより)

 水道事業の民営化は「安倍政権の水道民営化で生活用水が外資に狙われる」など、「外資は危険」であるとか「安倍憎し」といった文脈で語られることも多いので、残念ながら落ち着いて議論するのが面倒な案件ではある。ただ現在の自治体の水道局を、その自治体が100%株式を保有する水道運営会社に衣替えする、という段階までは遠からず時代の要請になるだろう。実質的な都市部の運営主体は変わらないが、合併・買収(M&A)が容易な株式会社に転換し、経営が厳しくなった過疎地の水道運営主体を救済合併する、といった事例が出てきても特に意外感はない。特に水源と消費地が離れた関東地方などでは、想定できる話だ。

 そうした形で水道事業が広域化していけば、電力やガスのように完全民営化してサービス地域を広げるのが合理的だ。外資の参入を恐れる声もあるが、国内にも水道事業に縁の深い民間企業は少なくない。たとえば地元・神戸でも、神戸製鋼所(5406)がもうすぐ完全子会社化を予定する神鋼環境ソリューション(6299)は、カンボジアの首都プノンペンの一部で戸別の給水までを担当する水道事業を手がけて1年半が経過した。神鋼環境が、ほんの一部でも国内で水道事業を受託することになれば、品質と実績によって、東南アジアで勢力を伸ばすであろうことは想像に難くない。

 民営化によって日本の水道運営主体が海外でも活動できるようになる意義も大きい。たとえば神戸市が経済交流を深めようとしているアフリカは、各地で水問題が山積だ。久元市長のいう神戸市水道局の「実力」が、アフリカの水問題の解決に活用できるようになるのであれば、世界が歓迎するだろう。「水メジャー」と呼ばれる仏ヴェオリアが世界中、我が物顔で活動できているのだとすれば、それは競合が少ないためという面もありそうだ。トヨタ(7203)やホンダ(7267)の車が世界に普及したことで、欧州車も米国車も昔に比べれば故障が少なくなったではないか。同じことが水道事業についても言えないのか。

 とはいえ神戸市の場合、水道事業は2020年度に26億円の最終黒字を計上し、神戸市の一般会計に1億8800万円を繰り入れる優良事業だ。この年は新型コロナウイルスの感染拡大による臨時休校や、飲食店の休業・営業時間短縮などで水の使用量が減少したにもかかわらず、立派に黒字を計上した。別会計である工業用水道事業でも3億8000万円の黒字を確保している。神戸市の水道事業の経営状態からみて、行政の課題は他にも多数あるのに民営化を急ぐことのメリットをいろんな意味で感じられない、という点はまあ理解できる。議論に時間がかかるのは仕方がない面もなしとはしない。

 そこで「実験都市」神戸としては、まず特別地方公共団体(一部事務組合)である阪神水道企業団(神戸市東灘区)を民営化するという、頭の体操ぐらいは済ませておいてはどうか。阪神水道企業団は、淀川から取水した水を浄水場で処理し、神戸市、尼崎市、西宮市、芦屋市、宝塚市の水道局に水道用水を供給する広域水道の組織だ。明石市が2025年から新たに水の供給を希望しているという、ビジネス拡大の機会もある。実際にコンセッション(運営権の民間売却)にたどり着くかは別としても、まずはわれわれが水道に何を期待しているのか、何を求めているのかを改めて考え直す機会は必要だ。そこに国際都市として世界への貢献度を高める可能性があるなら、なおさらだろう。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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