(解説)神鋼環境の完全子会社化は株価の重しか 神戸製鋼の株式数8%強増加へ

20210305神戸製鋼かんばん

 神戸製鋼所(5406)が5日に発表した神鋼環境ソリューション(6299)の株式交換による完全子会社化は当面、神戸製鋼の株価の重しになりそうだ。神戸製鋼の発行済み株式数は8%強増加する見通しだからだ。神戸鋼はすでに神鋼環境の株式を59.08%(952万1400株)保有する親会社。完全子会社化に向けては神戸鋼が神鋼環境の少数株主に対して、神鋼環境株1株と神戸鋼株4.85株を交換する。神戸鋼は神鋼環境株と交換するための自社株を新たに発行。このため神戸鋼株の需給悪化が意識されやすくなる。(写真は神戸市中央区の神戸製鋼所本社=資料)

 神戸鋼が神鋼環境を完全子会社化するのに必要な自社の株式数は3198万2287株の見通し。神鋼環境の発行済み株式数(1612万株)から神鋼環境の自己保有分(4314株)と親会社である神戸鋼の保有分(952万1400株)を除いた神鋼環境株659万4286株と神戸鋼の株式を交換する。この659万4286に交換比率の4.85を掛けた数が、完全子会社株のために必要になる神戸鋼株というわけだ。

 神戸鋼も自社株を保有していて、これを株式交換に充てることもできるが、現在保有する自社株は167万株程度だ。すべてを株式交換に充てたとしても、3031万2077株は新たに株式を発行する必要がある。これで計算すると神戸鋼の発行済み株式は8.3%増加する計算だ。神鋼環境の業績はすでに神戸鋼の連結対象になっていることから、株数が増えた分は単純に1株利益の希薄化につながる見通し。加えて市場で流通する神戸鋼株も増える。

 神戸鋼による神鋼環境の完全子会社化は、需給面では神戸鋼の株価を押し下げる材料になる。それでも完全子会社化に踏み切ったのは、神戸製鋼内部のエンジニアリング部門と連携を深め、環境面の事業を強化するのがねらい。5日に開いた神戸鋼の決算説明会で勝川四志彦取締役は、「石炭火力発電所でのバイオマス燃料推進のほか、水素やアンモニアを燃料とした発電(での連携強化)も視野にある」と説明していた。

 神戸鋼にとっては株価下落を覚悟の完全子会社化だったようだ。発表を受けて6日の神戸鋼株は下落した。何度でも使える手とはいえないだろう。神戸鋼は神鋼環境を完全子会社化する理由の1つに、親子上場による利益相反の解消を掲げた。だが同じく神戸鋼の上場子会社であるベアリング用鋼の日本高周波鋼業(5476)などに完全子会社化の思惑が浮上しないのは、このためといえる。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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