(解説)兵庫知事選 斎藤元彦氏が当選、「知事の資質」試す1期目が始まる
- 2021/07/19
- 04:10

18日に投開票した兵庫知事選では、元総務省職員で大阪府財政課長だった斎藤元彦氏(写真、選挙戦にて)が当選した。年齢は43歳。75歳の井戸敏三知事から30歳以上も若返った計算になる。知名度も首長経験もない斎藤氏は、組織の力で知事に押し上げられたと言ってよいだろう。さらに元上司である吉村洋文大阪府知事が2度も応援に入るなど、維新の応援が無党派層の支持に大きく寄与したという面もある。それだけに本人の魅力が未知数のまま、かつぎ上げられて知事になった斎藤氏は、8月1日に1期目が始まって改めて本人の資質が厳しく試されることになりそうだ。
資質という点で気になることを、たとえば1つ。斎藤氏は「大阪との連携」によって兵庫県の産業振興、経済活性化に取り組む方針だ。その中で、政策発表の記者会見などで繰り返したのは、神戸医療産業都市についても「大阪との連携は不可欠」ということだった。おそらく客観情勢は逆だろう。神戸はすでに医療産業に関する370社・団体が進出。医療産業では国内でのスタートアップの受け皿にもなりつつある国内最大の集積地だ。半面、場所に余裕がなく、これ以上の企業誘致が難しい大阪の吹田や中之島の医療産業拠点の方が、むしろ神戸との連携が必要だ。
阪神淡路大震災の復興をめざして20年以上も前から、ずっと取り組んで築いたのが神戸医療産業都市の現在の地位だ。確かに多くのプロジェクトは神戸よりも大阪で大規模に展開される。そのイメージを利用して大阪の医療産業振興に楽をさせようという了見なら、兵庫県民でもある神戸市の住民に対する裏切り行為にほかならないが、どうだろうか。「ハーバーランドのBE KOBE」といった、地元神戸への愛着を疑わす言い間違えはご愛嬌だとしても、はたして知事にふさわしい人物なのかという点で、期待が大きいだけに有権者の関心は引き続き高いだろう。
加えて、兵庫県の発信力に関しては井戸知事時代に引き続き、課題になりそうだ。もとより知事選は県外に広がりのほぼない話題であるとはいえ、各地で起きているのと同様に兵庫県でも自民が分裂したほか、維新が兵庫県知事選に推薦という形で初参戦した。維新の国会議員が自民の選挙カーに立って斎藤氏を応援したのも、よくある風景ではないだろう。斎藤氏と競った金沢和夫氏の陣営でも、世界的にも著名な指揮者の佐渡裕氏が初めて応援演説に立った。兵庫の選挙戦を巡る話題は現時点で大きくは報じられていないようだ。これは、このままでもよいだろうか。
東大卒で元総務省職員、自治体への管理職としての出向経験という経歴は、井戸氏や金沢氏と同じだ。それだけに斎藤氏には、若さに起因する行動力に期待が集まったのが鮮明だ。兵庫県を知らない大阪のメディアがこだわるのは公用車「センチュリー」の問題だが、金額の大きさを考えると、まだゼロベースに引き返せる段階の兵庫県庁舎の建て替えや、年30万人でも想定通りの集客が厳しそうな「兵庫津ミュージアム」などに、どういった手を打つかが注目だ。もはや道なりに進むしかない新型コロナ対策よりも、行動力が求められる場面は少なくないだろう。
(神戸経済ニュース編集長 山本学)
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