(解説)足元の明るさ映す今期予想 神戸の3月期会社、64%が業績改善へ

20210517今期予想まとめ

 14日までに出そろった神戸市に本社を置く3月期決算の上場会社33社の2022年3月期業績予想を集計したところ、64%にあたる21社が最終損益(連結純利益や単独税引き利益など)の増益または黒字転換という、損益の改善を予想していることが分かった。今期の赤字を予想した会社は1社もなかった。21年3月期は新型コロナウイルスの感染拡大が企業経営に深刻な打撃になったが、年度後半に景気回復は急速に進んだ。会社の業績予想がすべて正確というわけではないが、不透明ななかにも引き続き22年度に明るい見通しを持っている会社が多いことを反映した。

 新型コロナの影響で年間の決算発表の際に業績予想の「未定」が相次いだ前期と異なり、今期は全社が年間の業績予想を開示した。このうち最終損益が改善する金額が最も大きいのは川崎重工業(7012)で、改善幅は363億円だ。前期に193億円の最終赤字を計上したのが、今期は170億円の黒字へと転換を見込む。前期に動きがほぼ止まった航空機の機体やエンジンを製造する部門の赤字は、大幅に縮小する見通しだ。

 前期、今期とも黒字で増益率が最も大きいのは山陽電気鉄道(9052)で、連結純利益が4.8倍になる見通しだ。神戸電鉄(9046)が同2.7倍と続く。20年春の新型コロナ緊急事態宣言では同時に臨時休校も実施し、定期券での乗客数が大幅に落ち込んだ。緊急事態宣言が再発令されている足元では定期外の乗客も、昨年ほどの落ち込みではなく、今後はワクシン接種を目的とした移動などの需要も発生するとみている。交通機関の収益にも底入れ感が出てきたのを映した。

 今期の減益を予想する会社でも、必ずしも事業環境の悪化を示しているわけではないようだ。減益額が最も大きかった貴金属リサイクルのアサヒホールディングス(5857)は今期、連結純利益(国際会計基準)が29%減の182億円になる見通しだ。ただグループ内再編に伴い前期に約80億円の繰り延べ税金資産を計上したことが主因で、この要因を除けば4億円程度の増益になる計算だ。港湾運送が主力のトレーディア(9365)も高すぎるとみる海上貨物運賃の調整を織り込んだ減益見通しだ。

 新型コロナの緊急事態宣言で大型商業施設は土日に休業、飲食店は営業時間の短縮で、街の雰囲気は必ずしも明るくない。ただ日銀の長江敬支店長は、中長期的な視点として12日の記者会見で「ワクチン接種などを契機に感染症に対する警戒感が徐々にやわらぐようなら、これまで抑制されていたサービス消費が大きく盛り上がるということも考えられる」と話していた。日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)でも製造業を中心に景気は回復しているが、個人消費も新型コロナのトンネルを抜けた先は、案外明るいかもしれない。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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