(解説)兵庫知事選 自民グダグダで存在感、「あの人」に風が吹く可能性は?

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 7月18日に投開票する兵庫県知事の選挙では、県議会で最大会派である自民の動きが分裂というよりもグダグダ状態だ。自治体の首長選では圧倒的に有利とされる現職の井戸敏三知事が引退すると正式に表明しても、なかなか次の候補を立てられず、推薦する候補を決めるのに時間がかかった。総務省出身で大阪府の元財政課長である斎藤元彦氏の推薦を自民が決めたのは、同氏の推薦を維新が表明した後だった。一方で井戸知事が推す元副知事の金沢和夫氏が知事になれば、議会では最大会派と知事与党が異なる「ねじれ」も起きそう。そうした中で大阪・兵庫の両知事をまとめて一刀両断した「あの人」の存在感が高まりつつある。

 経過を振り返ってみよう。井戸知事が次の知事選に立候補しないと正式に表明したのが2020年12月11日だ。引退表明で、後継者が決められない自民をせかしたという解説も聞かれた。その後、井戸氏は一貫して金沢氏の支持を示唆し続けていた。20年12月14日の記者会見で「期待させてもらってもよいのではないか」と、事実上の後継指名をしている。その後も井戸氏は、金沢氏に対して後継者という単語こそ使わなかったが「期待する」と繰り返し述べていた。今年に入って3月25日に金沢氏が、3月31日に斎藤氏が相次いで立候補を表明。ともに自民に推薦を申請し、自民県連は21年4月7日の選挙対策委員会で、多数決で選んだのは金沢氏だった。

 だが自民県連は、所属する国会議員の意見によって方針を転換。斎藤元彦氏を推薦候補として9日に党本部に上申し、これが4月12日に認められた。このプロセスに対して井戸氏が定例記者会見やラジオ番組などで、重ねて違和感を表明。一方で、県連会長の谷公一衆院議員は14日、斎藤氏を推薦候補とした手続きが正当なルールに則ったものだとを主張する文書を関係者に配布し、斎藤氏は党総裁の菅義偉首相から推薦証を受け取り党本部で異例の記者会見を開いた。さらに4月20日に開いた金沢氏の後援会発足式で、井戸知事は「金沢さんこそ、真の自民党県連の候補者」と自民による支持を主張するビデオメッセージを寄せた。われこそは自民候補という応酬は、なお継続している印象だ。

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 選挙には地盤(支持者)、看板(知名度)、カバン(選挙資金)の「3バン」が必要だというが、自民推薦という「看板」は斎藤氏が獲得。一方で金沢氏の後援会の役員名簿を見ると、商工会議所や経済同友会などに関わる財界人の名前がずらりと並ぶ。どうやら金沢氏は、井戸氏のカバンを引き継ぐことができたようだ。問題は投票する支持者をどれだけ獲得できるかということだが、これだけ揉(も)めたのが明るみに出て、報道も相次ぐ中にあっては両氏に対して「コロナもあるのに大丈夫か」と思うのが多くの有権者の素直な気持ちだろう。特に、最大勢力である無党派層にとっては、リーダーシップの実績がある候補に期待が高まる局面だ。

 そうした中で俄然、注目度が高まっている「あの人」とは泉房穂・明石市長だ。泉氏を巡っては、立民や国民民主の元議員らが擁立を検討したが、本人が辞退したと伝わっている。ただ知名度や人気は、自民の選んだ金沢氏や斎藤氏を大きく上回る。明石市幹部に対するパワハラ発言が報じられたのを受けた、19年の出直し選挙でも圧勝した。現職の明石市長とあって行政経験もあり、特にコロナ対策では保健所を運営する中核市として感染対策を展開する一方で、家計などには「明石市独自の17の支援策」を効果的に広報。メディアに露出する機会も増えており、兵庫県外での知名度も上昇中だ。

 その泉氏は、知事選立候補を断ったと伝わった直後の4月13日に開いた「県・市町懇話会」で井戸氏を目の前に、こんな発言をしている。「明石市も全面協力するので明石港の再整備は、残りわずかではあるが井戸知事の任期中にしっかりと道筋を付けていただくか、もう1回しきり直して6期目に挑戦いただくか、そのどちらかをお願いしたい」。明石港の再整備は、泉氏によると井戸氏の「副知事時代からの懸案だった」というから、6期目への挑戦を促すのは泉氏による皮肉とも取れそうだが、少なくとも井戸氏が知事にとどまることを容認する発言ではある。

 それが4月26日の定例記者会見で泉氏は一転して、「有害」と評した大阪府の吉村洋文知事とともに、井戸氏を「無能」と切り捨てたのが伝わっている。病床を確保すべき知事の仕事を放棄してきたのは、怠慢だと指摘した。これまでも泉氏はコロナ対策に関して兵庫県の対応を「上から目線」などと批判してきたが、これらはむしろ兵庫県の官僚機構に対しての不満という形を取っていた。4月13日の県・市町懇話会でもコロナ対策について泉氏が声を荒げる場面があったが、ほこ先は兵庫県の担当部長らに向けられたものだった。正面を切って井戸氏を批判することは珍しかった泉氏に、知事への意欲が芽生えていると読み取ることができるのだろうか。

 旧民主党である数人の元議員が立候補を促したぐらいでは、泉氏も知事選に勝ち目を感じることはできないだろう。やはり明石市長を辞職してまで知事選に出馬するには、リスクが大きいと考えるのが普通だ。だが、たとえば現時点で金沢氏の推薦を打ち出している連合兵庫が翻意すればどうか。あるいは、公明が自主投票になればどうか。通常なら圧倒的に強力なはずの現職による支持表明は、「うちわ(問題)」の逆風にあおられるかもしれない。さらに自民のグダグダ状態で泉氏に風が吹き、無党派層の票が一気に流れる可能性もある。7月1日の知事選告示まで2カ月を切った。泉氏の動向は引き続き関心を集めそうだ。

 兵庫知事選にはこのほか、元加西市長の中川暢三氏、元県議で共産推薦の金田峰生氏もそれぞれ立候補を表明している。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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