住友ゴム、「富岳」を利用開始 独自のタイヤ材料開発技術さらに高度化

20210310住友ゴム富岳利用

 住友ゴムは9日、同日に全面稼働を開始したスーパーコンピューター「富岳」を活用したタイヤの材料開発に乗り出すと発表した。高度情報科学技術研究機構(神戸センター、神戸市中央区)が募集した、2021年度の産業課題に関する富岳の利用枠に採択された。同社は先代のスーパーコンピューターである「京」を活用した、独自の材料開発技術「ADVANCED 4D NANO DESIGN(アドバンスド・フォーディー・ナノ・デザイン)」を確立。より高性能なコンピューターに置き換わることで、材料開発技術も高度化できると見込む。

 同社のADVANCED 4D NANO DESIGNでは、佐用町の大型放射光施設「SPring-8(スプリング8)」や、茨城県那珂郡東海村にある加速器実験施設「J-PARC(Jパーク)」を使ってゴムの構造を分子レベルで把握したうえで、コンピューター上に描いたゴムをシミュレーション。新たに合成するゴムの特性を検討する。富岳を活用することで、分子運動に加えて化学変化まで表現したゴム材料のシミュレーションをめざし、新品時の性能が長く持続する「性能持続技術」の向上などにつなげたい考えだ。

 これまでは、分子構造が明らかになった高分子(ポリマー)を、シミュレーションの際にコンピューターの能力に合わせて簡易的に表現する必要があった。今後は分子の曲がりやすさや運動性を忠実にモデル化することで、タイヤ使用中にゴムの中で起きている化学変化をより詳しく把握できる見込みだ(図=住友ゴム提供)。特に自動車の電動化(EV化)によって、タイヤからのエネルギーロスの抑制が従来以上に求められる見通し。このためタイヤに使う材料の重要性が高まると見られており、材料開発技術の高度化が次世代移動手段のエネルギー効率改善につながる公算だ。
 
 ADVANCED 4D NANO DESIGNを巡っては、シミュレーションを終えて実際に合成したゴムの特性を調べる技術も進展。住友ゴムは東北大学の八代航准教授との共同研究によって、X線を照射する内部構造の断層撮影(CT)の際に、高速撮影する技術を開発したとも発表した。従来の1000倍の速さで撮影できるようになり、引っ張る実験でゴムが破壊する様子を、より実際に近い状態で観察することができるようになったという。

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