(解説)神戸の変化、実感する2021年に 「スーパーシティ」への経路探る

 明けましておめでとうございます。どうぞ2021年も、神戸経済ニュースをよろしくお願いいたします。昨年は東京五輪・パラリンピックと意気込んで始まりました。ですが、思えばもうそのころには徐々に新型コロナウイルスの感染が拡大しつつあったことになります。延期になった東京五輪・パラリンピックこそ今年の日程が出ていますが、まだ多くの行事予定は「(仮)」「(未定)」といった状況です。一方で、新型コロナの感染拡大前から進んでいた大型のプロジェクトが、徐々に神戸の姿を変えています。

■新しい街に新たな公共交通機関
 2021年は神戸の都心部が変化ているのを実感する1年になりそうだ。まず阪急神戸三宮駅(神戸市中央区)の周辺が大きく変わる。1995年に発生した阪神淡路大震災から約20年も仮設だった阪急神戸三宮駅の駅ビル「神戸阪急ビル東館」が春に開業。同ビル北側の「さんきたアモーレ広場」が完成する予定だ。あわせて「神戸阪急ビル西館」のリニューアルと、「サンキタ通り」の歩道拡張工事などもあわせて終える。建物、広場、道路が同時に新しくオープンすることで、向こう10〜20年かけて展開する三宮再開発に先べんを付ける。

 阪神淡路大震災から26年が過ぎた翌日の1月18日に、神戸市の中心市街地は少し南に広がる。この日、通販大手のフェリシモは新港第1突堤の基部(付け根部分)に新本社にオープンする。新港突堤とその基部は、かつては神戸港を通じた輸出入には欠かせない港湾機能があった場所だが、貨物のコンテナ化や船舶の大型化によって港湾荷役機能はポートアイランドや六甲アイランドなどへと移転した。再開発の一環で第1突堤には宿泊施設が15年12月にオープンしたが、オフィスビルの開業で日常的に同地区へ通う人の数が大幅に増える。

20210101フェリシモ本社
建設中の神戸ポートミュージアム(左)とフェリシモ本社

 さらに3月にも自動車販売のモトーレン阪神(西宮市)を中核会社とするGLION(ジーライオン)グループの本社ビルが完成する。10月ごろには水族館などが入る「神戸ポートミュージアム」に加え、フェリシモが本社内にチョコレートミュージアムや、ワイナリーを開設する。4月から三宮〜新港町〜ハーバーランドを結ぶ連節バスの運行が始まる。宿泊施設に新たな文化施設、商業施設、オフィスビルに公共交通機関が加わることで、1992年に街開きしたハーバーランド以来ともいえる都心での新しい街の誕生を実感できるだろう。

■生きるか「後発のメリット」
 2021年に実感する神戸の変化は、まだ入り口にすぎない。22年春から23年秋にかけては東遊園地周辺で「こども本の森神戸」「税関前歩道橋」「東遊園地再整備」が相次いで完成する。大阪市で国際博覧会(大阪・関西万博)を開く25年にはJR三ノ宮駅南側の三宮交差点で大幅に車線数を減らして自動車の乗り入れを制限する「三宮クロススクエア」第1期が完成。神戸空港の国際線就航も、この時期をめどに検討。都心部と空港を接続する道路の増強が進む見通しだ。26年には三宮で大型バスターミナルビルが完成する。

 ようやく今年から始まる「目に見える神戸の変化」だが、阪神淡路大震災からの応急処置が一巡した1997年ごろから約20年間は、都心・三宮の風景はほぼ変わらなかった。この間に中国、韓国、東南アジアで大都市の競争力が急速に向上。東京では羽田空港の国際線再就航や丸の内・日本橋・六本木再開発などの対抗措置も進んだが、神戸はこうした国際的な都市間競争に出遅れた印象は強い。ここで神戸に求められるのは、神戸商工会議所の家次恒会頭(シスメックス会長兼社長)が強調する「後発のメリット」だろう。周辺都市が見落としたものを、いかに取り込めるか。

 新たに出てきた情報通信技術に対応するというだけの話ではない。たとえば神戸空港の国際線就航を考えたときに、海外の重要人物(いわゆるVIP)を迎えられる体制も整備するということだろう。大阪・関西万博など大阪での行事に海外からVIPが訪れるときは、神戸で送迎することで、旅客や物流の大動脈である関西国際空港の動きを止めずにすむ。これから国際線ターミナルを整備する際に、関西全体に貢献する役割をになうことができる。一方で玄関口の役割をはたすことは、神戸の存在感を高めることにもつながりそうだ。

■いずれ大都市は「スーパーシティ」に
 もちろん新たな情報通信技術への対応も必要だ。背景には人工知能(AI)やビッグデータといった現在の先端技術が、やがて普通の技術になり、都市での暮らしを大きく変える可能性が高いということがある。政府は3月26日の締め切りで、先端技術を使った「スーパーシティ」構想に向け、規制緩和のモデル地区にする自治体の公募を始めた。神戸市は現時点で応募するか態度を示していないが、遅かれ早かれ大都市は国際競争に巻き込まれ、スーパーシティになることを求められることには違いない。これからの街づくりを考えるとき、それが仮に小規模な駅前再開発であったとしても欠かせない視点ではないか。

20190608バスターミナル
バスターミナルビルの完成予想図=資料

 日本では海外に比べて最新世代の通信技術「5G」の普及は遅れているが、「5G」が普及すれば公衆無線LAN(Wi-Fiスポット)の設備は不要になる可能性が高い。バスターミナルビルの2期が完成したり、21年度内の都市計画決定をめざすJR三ノ宮駅ビルが完成したりする時代には、もはや「7G」「8G」といった時代を迎えている可能性もある。現在は街中で常識的に設置している監視カメラも、別のセンサーに置き換わるかもしれない。通信規格以外にも、さまざまな想定外の新技術に対応するには柔軟さが必要だ。

 現在の再開発事業では「構想」「計画」「設計」と手順を踏んだ後、ただただ「着工」「完成」をめざすケースが多い。だが新バスターミナルなどの大型プロジェクトでは計画、設計、工事と、ぞれぞれの段階に年単位の時間が必要になる。構想や計画が時代遅れになっていないか随時検討し、その結果が着実に設計や工事に反映できる体制づくりは必須だ。JR西日本と神戸市が当初20年度の決定をめざした三ノ宮駅ビルの計画を見直したことで、計画を随時見直す体制づくりの時間を得たとは考えられないだろうか。事業が長期にわたるときに、柔軟な計画の見直しがいかに重要かは、三宮の風景が変わらなかった20年間、新長田駅南の震災復興事業で痛いほど学んだはずだ。
(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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