新長田再開発「事業長期化が神戸市のリスクに」 赤字326億円で事業検証

 神戸市が11日に開いた新長田駅南地区の再開発事業を検証する有識者会議(座長・加藤恵正兵庫県立大院教授)で最終回の第4回会合では、再開発事業がめざした「被災者の早期生活再建」「災害に強い街づくり」という2点について「事業目的はおおむね達成されている」とする検証結果をまとめる方向で一致した。ただ対象地域の広さ、権利者数とも全国的にみても珍しい大規模な再開発だった。このため事業期間が長期化し、バブル経済の崩壊や、その後の長引く不況といった当初の想定を超える情勢変化の影響を受けた結果、神戸市が大きなリスクを負うことになったと指摘した。

 阪神淡路大震災直後の1995年に始まった新長田駅南地区の再開発事業は、対象地域の全街区で建設計画が出そろった。これに伴い事業全体の収支の試算ができるようになり、通算で326億円の赤字が発生する見通しが明らかになった。巨額の赤字の背景には、約20ヘクタールという広大な地域で再開発事業を手がけたため、事業期間が長期化したことがあると分析した。災害復興事業であることを考えれば一般会計からの資金投入もあり得るが、それでも事業採算を無視するわけにはいかないという観点で、復興事業を実施する際の規模をどう検討するかは今後の教訓の1つになるようだ。

 事業開始当初は仮設住宅の解消が急がれたことなどもあり、迅速な住宅の供給をめざした。この結果、同地区の人口は現在、震災前の1.4倍に増えている。住宅供給に焦点を絞ると一定の成果を上げたとの見方は有識者の間で一致した。だが「にぎわいのある街並みが形成できたか」という点では課題が多いとの認識でも一致。商業施設や工業用地の再整備が、住宅よりも後回しになったことで、震災をきっかけとした地区外への転出や閉業が相次いだ。震災前と同等の面積を確保した商業床は埋まらず、地場産業だったケミカルシューズ産業は地区外での被災事業者向け工業団地で再建することになった。

 災害復興のための再開発事業は、通常の再開発と異なり、年単位の時間をかけた緻密(ちみつ)な準備が不可能だ。このため柔軟に事業計画を変更できるような意思決定の体制が必要だったとも指摘する。特に再開発事業は、土地の高度利用によって発生する新たな床(保留床)を活用し、売却や賃貸による収入で事業費をまかなう仕組みだ。保留床が活用できる社会経済環境が前提になる。情勢変化に応じた計画の変更ができないことが、大きな損失につながりやすい構造だ。加えて、本来であれば事業リスクを共有するはずの権利者が転出して不在になる区域が相次ぎ、事業主体である神戸市にリスクが集中した結果が326億円の赤字という面もあった。

 もっとも326億円の赤字額は、未活用の保留床(約181億円)が今後、順調に稼働することが前提だ。再開発事業の最終的な収支は、さらに悪化する可能性も残る。神戸市は年内にも最終的な検証結果をまとめ、公表する計画だ。

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