(解説)東証で全銘柄終日の売買停止、1日違いで影響小さく 2日は通常取引

20180822東京証券取引所

 1日の東京証券取引所(写真)では、システム障害のため全銘柄の取引を終日停止した。東証がシステム障害を理由に、売買を終日停止するのは初めてという異例の事態。投資家への影響は大きかったが、経済全体への影響は限定的だった。もとより1週間のうち少なくとも2日間は休場する株式市場のことだがら、1日ぐらい臨時休場が増えても影響は軽微にとどまる。それでも障害が発生したのが10月1日だったは、不幸中の幸いといえそうだ。東証は2日は、通常どおりの取引を実施する計画という。

 東証の宮原浩一郎社長らは1日夕方に記者会見し、システム障害の原因が「共有ディスク装置」と呼ばれるディスクの故障という、ハードウエアの障害だったことを明らかにした。ハードウエア障害がいつ起きるか分からないことを考えると、仮に1日前の9月30日に障害が発生していれば影響は相対的に大きくなっていただろう。上場会社の8割という多くの会社が9月末を中間決算の締め切り日にしている。その9月末の株価が分からなくなるからだ。

 中間決算のことだけを考えるなら、仮に9月30日の株価が分からなくても29日の終値を採用すればよいだけだし、他にもやり方はいろいろある。あえていうなら、NTTドコモ(9437)のような大型株でもストップ高になるような流動性の低い相場環境で、1日分の株価材料が織り込まれていない株価は「正確でないと、いえなくもない」といったところか。それでも9月30日に全銘柄が売買停止になるよりも10月1日の方がまだ、よかったことはよかった。

 加えて10月1日はアジアの多くの国で休場だった。中国では1日から8日まで国慶節(建国記念日)の大型連休に入り、上海・深セン市場が休場。香港は1日の国慶節に加え、2日は中秋節(旧暦8月15日=中秋の名月)の翌日で祝日だ。台湾、韓国の市場も中秋節で1日に休場した。シンガポールは通常取引だったが、普段よりも東京市場の市場参加者は減少が見込まれた。従ってアジアに拠点を置く外国人投資家への影響は、やはり前日に障害が発生するよりかは小さかっただろう。

 こうした点から障害が発生したのが10月1日だったのは「運が良かった」といえそうだ。さらに報道によると東証は、同取引所に接続する証券会社などの意見を聞いて、混乱回避を目的に売買を終日停止にすることを決めたという。不規則な形で売買注文がキャンセルされることなどを回避した。市場関係者も含めて冷静に対処したもよう。頻発するなら困ったものだが、こうした予期できないシステム障害が10年に1度ぐらいは発生するのを、デジタル化が進展した社会では受け入れる必要があると、改めて認識する機会になったのではないか。

 東証は過去の教訓から「ネバーストップ(絶対止まらない)」が目標といい、今回の売買停止は東証にとって失態であることは違いない。ただ取引所にも医療機器や航空機のような「絶対に安全」という仕様を求めるならば、そのための高いコストを誰が負担するのかという議論は必要だろう。上場する企業のほぼ全部が日本企業という東証は、取引所の国際競争の観点で既に微妙な立場にある。上場会社や証券会社などに求める手数料の多寡とシステムの安定性が、トレードオフの関係にあるのだとすれば、そのバランスはどの程度が利用者を呼び込むのに適正なのか。国内に国際金融センターを構想するうえでテーマの1つにもなり得るだろう。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

▽関連記事
関連記事

広告

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

広告

広告

神戸経済ニュース twitter

神戸経済ニュースについて

神戸経済ニュース

Author:神戸経済ニュース
神戸市域の景気・企業・金融・経済政策などにまつわる話題を随時お伝えします。すべての記事が書き下ろしです。詳しくはこちら。

広告