(解説)いっそのこと気象庁を誘致すれば 「防災庁」新設のハードル高く
- 2020/09/22
- 03:06
兵庫県は2021年度の国の予算への提案でも、復興庁の後継組織として防災に関する行政を一元化する「防災庁」を新設し、神戸に本庁舎を設置することを求めている。このところ同県は防災庁の誘致に力を入れ、井戸敏三知事は「できるまで継続する」と意気軒昂。だが、公務員の不足が指摘される中で時限措置の復興庁とは異なり、新たな省庁を恒常的に新設するハードルはあまりにも高い。そこで防災に関係する既存の省庁である「気象庁」を神戸に誘致してはどうか。これは日本全体の利益になると考えられる。
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東西に主要な機能を備えた庁舎を持つならば、現場にとってより重要な拠点は西の庁舎になるはずだ。大地震の対策は重要だが、それよりも九州付近を通過する台風は、毎年という高い頻度で現れる。道路、新幹線、空港を備えた西日本全体の玄関口の機能を持つ、交通の結節点にある神戸に本庁舎を置き、指揮命令系統を持つことで、より西日本の状況に普段から関心が向きやすくなるだろう。さらに明石市などを通る東経135度を日本の標準時としているように、神戸を含む近畿地方は地理的にみて日本の中心にある場所だ。日本全体の気象現象を集める場所としてバランスもよい。
加えて神戸では、まもなくスーパーコンピューター「富岳」(写真=資料)が完成する。気象庁も自前で1秒間に847兆回の計算能力を持つスーパーコンピューターを保有し、日々の予報などに活用している。だが気象衛星から得られるデータは長期的にみて増える方向だし、海面の温度など従来は予報に織り込んでいなかったデータの活用などを考えたとき、どういう成果が得られるかという研究用のコンピューター資源も必要になる。そうした気象関連業務の高度化などに向けては、富岳が近くにあるというのは大きな利益になるに違いない。
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復興庁の設置は時限措置といっても2031年まで存続する。従来の計画よりも10年の延長が決まった。それに菅義偉首相が「縦割りの打破」を強調する中で、新たな縦の壁になる省庁の新設は情勢的にも難しいだろう。仕事の成果である「日々の天気予報」をオンラインで必要な機関に配信できる気象庁の本庁は防災に関する省庁として、東京から神戸への移転に最もふさわしく、現実的ではないか。東京・虎ノ門で新庁舎の建設を終えた気象庁が、次の拠点整備に乗り出すなら、「本庁舎」として神戸への誘致活動を展開する価値はあるかもしれない。
(神戸経済ニュース編集長 山本学)
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