神戸製鋼、高炉内の温度予測にAI投入 熟練者の減少も操業持続へ

20200917高炉の仕組み

 神戸製鋼所は17日、安定的な鉄の生産に必要な高炉内部の温度「炉熱」の予測に人工知能(AI)の活用を始めたと発表した。加古川製鉄所(加古川市)で3基ある高炉のうち第2高炉で8月に導入。これまで高炉の内部温度を適温に保つには、熟練者の勘や経験に頼っていた面が大きかったが、熟練者が減少しても操業を持続することなどを目的に、約1億円を投じて開発。さらに炉熱予測に並んで重要な、炉内の通気性を確保するための「通気予測」の開発にも乗り出した。

 高炉は、上部の「炉頂」からコークスと鉄鉱石を交互に投入、下部の「羽口」から熱風と微粉炭を吹き込み、熱風でコークスと微粉炭を燃焼する。発生する一酸化炭素で鉄鉱石を還元し、溶けた鉄「溶銑(ようせん)」を取り出す仕組みだ(図=神戸製鋼提供)。原材料の状態などから炉内の温度や通気性が常に変動し、これを吹き込む熱風の温度や量などで調整。溶銑を摂氏1500度に保つように調整する。これまでは炉内に取り付けた温度計の数値や、羽口の色などを観察して熟練者が熱風などを調節していた。

 それでも数年〜10年に1度ぐらいの頻度で、炉内の温度が下り、原料や溶銑が炉内で固まって取り出せなくなる「炉冷事故」が起きる。こうした事故が起きれば、いったん高炉の操業を中止する必要があり、数十億円のコストアップ要因だ。この他にも高炉の操業が安定しないことによるコストアップ要因があり、新たに投入したAI炉熱予測のシステムでは、こうした「余計なコスト」を抑えることができる見通しだ。

 具体的には過去数十時間という比較的短時間の炉内温度の変化と、熱風の調節など人間の操作の関係をAIが学習し、5時間後の温度を予測する。5時間後に大幅に炉内温度が低下することが分かれば、対応してから実際に炉内温度が上がるまでの時差を考慮しても間に合う。比較的短時間での予測にしたことで、異なる高炉や原料種などさまざまな環境条件が変化にも対応し、正確な予測が可能になる。加えて他の製鉄所への適用も容易とみている。

 神戸製鋼では、さらに1億円程度を投入して「通気予測」の開発にも着手した。炉熱予測と通気予測の両方が可能になれば予測を受けて自動的に、原料投入の量やタイミング、熱風の温度などをAIが制御する「AI操炉」も可能になるとあって、5〜6年内での開発をめざす。足元では価格の高いコークスの使用量をできるだけ減らしていることもあり、安定操業の難易度は以前に比べて上昇した。こうした状況に対して神戸製鋼は、コンピューターの性能向上や進歩したAI技術を活用して対応する考えだ。

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