新長田再開発の全体事業費2279億円 赤字は通算326億円に、事業検証も開始
- 2020/07/31
- 02:04
神戸市は30日、阪神淡路大震災から2カ月後の1995年3月に都市計画決定して開始した新長田駅南地区の再開発にかかる事業費が全体で、2279億円になりそうだと発表した。公園や道路の整備が完了し、計画した再開発ビル44棟すべての概要が固まったことで、全体事業費の概算額が判明した。一方、再開発によって生み出した商業スペース「保留床(ほりゅうしょう)」の売却予定分を見込んでも、事業期間である28年間の通算で326億円の収支不足(赤字)が発生する見通しも明らかになった。収支不足は事業主体の神戸市が一般会計から随時補充している。
震災前に約4500人が住んでいた新長田駅南地区。当初は約20.1ヘクタールに2710億円を投入し、およそ3000戸の住宅と商業スペースを供給する計画だった。ただ用地買収に時間がかかったうえに、バブル経済崩壊で保有床の売却も想定通りに進まず、建設費用などを抑えても収支不足が発生した。一部の用地買収を断念したこともあり、最終的に再開発を実施した面積は19.9ヘクタール。23年7月に兵庫県立総合衛生学院が入居する9階建ての建物が完成し、全体の事業を終える見込みだ。
住宅戸数は震災前の約1500戸が約2800戸に増え、居住者数は約4500人から6100人に増えた。ただ昼間の人口(従業者数)は、震災前の約4900人が2016年時点で約3300人と逆に減少。神戸市と兵庫県の新長田合同庁舎と県立総合衛生学院で昼間の人口は約2000増える見通しだが、街のにぎわいが戻るかについては見方が割れている。これまでには被災した住宅、店舗の代替分に相当する28棟については完成した2007年に再開発事業の収支を公表し、約90億円の収支不足を一般会計で補ったことを示していた。
神戸市は新長田再開発について、有識者会議を立ち上げて検証を開始することも同時に発表した。第1回の会合を8月7日に開催し、検証の進め方などについて議論。年内にも結論を出す見通しだ。震災発生から2カ月での都市計画決定が「住民の声を無視した強引な決定」と批判を集めた。ただ東日本大震災では発生から9年が経過した現在も仮設住宅が残ることを考慮すれば、約2年で仮設住宅を解消した神戸市の早期の事業着手が奏功した可能性も残る。加えて再開発による経済波及効果や、地域コミュニティへの影響など幅広い観点で検証して事業全体を評価したい考えだ。
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