(解説)神戸市、災害時の物資供給協定が30社に 震災の教訓受けて社数増
- 2020/01/11
- 04:18
阪神淡路大震災から25年になる17日は、災害が発生したときの民間企業の社会貢献についても、改めて考える機会になるだろう。神戸市は10日、神戸市内に「西友新長田店」を構えるスーパー大手の西友(東京都北区)と、神戸市内にスーパー8店舗を展開する万代(大阪府東大阪市)とのそれぞれの間で、災害時に食品を含む物資の供給を受けられる協定を結んだと発表。これで神戸市が同様の目的で協定を結んだのは30社・団体に増えた。神戸市が協定の締結先を増やしているのは、1995年に発生した阪神淡路大震災の際の教訓がある。
1995年の震災発生時、物資の供給に関する協定を神戸市と結んでいたのは生活協同組合のコープこうべ(神戸市東灘区)だけだった。同生協と神戸市は1970年代の石油危機を受けて、物資の安定供給などに関する協定を締結したという経緯だ。さらに両者の担当者が協定を巡って1994年の年末にやりとりしていて、連絡先がすぐに分かったという偶然があった。この協定を災害時にも活用することを両者の担当者で決め、コープこうべからは避難所などに対し、物資の供給を震災が発生した当日中に開始した。ただ神戸市内の避難者数は最も多かった95年1月24日で約23万6800人。供給できた物資の量はとうてい十分とはいえなかった。
このため神戸市は震災後、できるだけたくさんの小売業と協定の締結をめざした。これまでに90団体が加盟する神戸市商店街連合会や、農協のJA兵庫六甲、百貨店、コンビニエンスストアなどと災害時に物資の供給の協定を結んだ。震災後に協定を結んだ相手先は西友と万代を合わせて29社・団体というわけだ。神戸市地域防災計画では災害発生からの3日間、各家庭の備蓄で5万人分がまかなえることを前提に、20万人の避難者に食料・物資を供給できる備蓄の整備を進めている。
こうした協定を自治体と結ぶことで、企業側も地域密着の姿勢を示すだけでなく、災害時の事業継続計画(BCP)を作成するのに役立てられる。もともと行政とは違う機能に強みを持つ民間企業は、災害時にもまた行政とは違った力を発揮できる可能性がある。ただ同時に、民間企業も行政も被災している可能性が高い。従業員や家族らの安否も気がかりだし、何をするにも安全が確保できるのか分からない場面かもしれない。そうした想像力をはたらかせながら、まずは避難経路から、改めて確認する時間を取りたい。
(神戸経済ニュース編集長 山本学)
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