住友ゴム、「水素添加ポリマー」解明が性能持続の突破口に 技術説明会を開催

20191120技術説明会

 住友ゴム工業は20日、ぬれた路面でのブレーキ性能(ウエットグリップ性能)が使い続けても長持ちするタイヤ「エナセーブ・ネクストⅢ」の発売を12月1日に控えて、報道機関向けの技術説明会を東京都内で開催した(上の写真)。説明会では、JSRが開発し、今回採用した新素材「水素添加ポリマー」が持つ、酸化による劣化を防ぐ性質について解明したのが、タイヤを開発するうえで突破口になったことを明らかにした。今回の新製品では、4年間の使用に相当する2万キロ走行時のウエットグリップ性能の低下の度合いを、従来の10%から半減させた。
 
 タイヤの性能低下の原因になるゴムの劣化は3種類。路面との接触による「き裂摩耗」、時間の経過で化学的に性質が変化する「経年変化」、キズなどのき裂摩耗が化学的な変化をまねく「メカノケミカル変化」だ。これまで、き裂摩耗や経年変化に対応した製品は発売していたが、メカノケミカル変化への対応が根本的には性能持続のカギだった。

 新素材「水素添加ポリマー」はタイヤにキズが付くなどで物理的に切断されても、そのままでは不安定のため再結合しやすいという性質を持つ。このため傷口から酸化などの化学的な変化が広がりにくいというメカニズムを解明したことで、性能が持続するタイヤの製造が可能になった。

 メカニズムの解明に役立ったのはAI(人工知能)だ。使用後のタイヤがどう変わるのかがAIによる画像分析で鮮明になり、開発を格段に加速させた。「ここ数年でタイヤ内部の全容がほぼ見えるようになった」(材料開発本部の上坂憲市・材料企画部長)という。従来の大型放射光施設などを使った素材の解析も引き続き活用。今後は性能が低下しないだけでなく、走ることで性能が向上するタイヤの開発をめざす。

20191120説明資料
技術説明会での配布資料

 住友ゴムは、次世代タイヤの開発理念として掲げる「スマートタイヤコンセプト」を17年の東京モーターショーで発表。安全性能と環境性能を同時に高める取り組みを進めている。今回の「エナセーブ・ネクストⅢ」は、環境面では材料の1つに生物由来の素材「セルロースナノファイバー」を採用。スマートタイヤコンセプトを取り入れた第1弾の製品になった。

 今回の新製品で、スマートタイヤコンセプトで示す理想のタイヤにどのぐらい近づけたか聞くと、村岡清繁執行役員は「20〜30%ぐらいだろうか」と話していた。新素材である水素添加ポリマーの活用にしても、「これで最終形ではなく、さらなる最適化が進む」(村岡氏)とみる。

 タイヤの性能持続は自動運転車の安全性にとって、重要な要素の1つだ。自動車が変わることで、タイヤに求められる機能も変化する。普及が進めばコストへの要求も一段と厳しくなる公算だ。こうしたタイヤを取り巻く環境の変化には、高い技術を持つことで可能な限り柔軟に対応するという姿勢を、今回の新製品で改めて示した形だ。


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