谷上プロジェクト「連携できる施設増えるのが将来像」 Chatwork山本CEOに聞く
- 2019/11/10
- 21:28

神戸市北区の谷上で新たなビジネスのコミュニティ作りをめざす「谷上プロジェクト」が2018年5月のスタートから1年半が経過した。この間に神戸市が北神急行の施設を買収し、三宮と谷上を結ぶ同路線の値下げが実現する見込みになった。一方で運営主体の中心であるビジネスチャットの「Chatwork」も東証マザーズに株式を新規上場するなど、谷上プロジェクトを取り巻く環境も変わりつつある。谷上プロジェクトの現状と、今後の展開についてChatworkの山本正喜・代表取締役CEO兼CTO(最高経営責任者・最高技術責任者)に聞いた。(上の写真は山本氏=「.me」にて)
--谷上プロジェクトの現状をどうみていますか。
「月に1回のペースで開催している『Meetup(ミートアップ)』というイベントが軌道に乗ってきたのが大きな1つの成果だと思う。毎回20~30人が集まり、そのうち7割ぐらいが初めての参加者というのが定着してきた。以前は谷上プロジェクトに興味のある人が、『. me』(ドットミー、谷上プロジェクトの中核になるコワーキングオフィス)を見学に訪れては誰とも出会わずに帰っていたが、定期的なミートアップの開催で新たな化学反応も起きている」
「北区は結構広いこともあり、いろんな人がいて、前から気になっていたと立ち寄ってくれる。たとえば普通の地元企業の経営者や、弁護士さん、意外に多いのはフリーランスの人だ。起業したい人ばかりというわけでもなく、これだけ幅広い業種の人が集まるコミュニティも珍しいと思う。これからスタートアップをめざす人も増えてくるのではないか」
--今後は大阪や東京といった、遠くからの人が定着することもあり得ますか。
「少なくとも今後は、三宮方面からは人が呼びやすくなるだろう。せっかく駅ナカにあるし、北神急行の運賃も来年6月に値下げになるというので、活性化をねらいたい。いま企画を仕込んでいるところだ。三宮~谷上の運賃が高いのは心理的な壁になっていた。これまで通勤経路としても認識されていないような面があったのも変わるだろうし、神戸市が力を入れている駅前広場の整備にも期待している」
「東京や大阪からスポットで谷上を訪れてくれる人はいるし、すでに大阪などから谷上に引っ越して定住した人も少しいる。神戸の街を気に入って、なおかつ谷上プロジェクトを面白がってくれる人が増えればいいなと思う。わりと場所を問わずに、自由に働ける人は増えているので、そういう人が谷上に定着するかもしれない」
谷上駅のコワーキングオフィス「. me」=資料
--谷上プロジェクトとしての短期的な目標、さらに中長期的な展望は。
「谷上プロジェクト単体で収支を安定させたい。コミュニティは形成しつつあるが、(人もお金も)通り過ぎてゆくのが現状だ。これをどう収益化するのか。Chatworkから資金を投入しなくても成長していくようにすることが、プロジェクト全体の継続には必要になる。コワーキングオフィスの会員数も増えているが、駅ナカというメリットを使って飲食を充実させるなどで、プロジェクトをサステナブル(持続可能)にしたいと思う」
「長期的には、街づくりみたいな話とも関係してくるが、いまのところ谷上には来ても泊まるところがない。結果として三宮に流れがちだ。谷上プロジェクトが起点になって、店舗だとかホテルだとかが誘致できるように、街が盛り上がっていってほしい。さらに『.me ホテル』だとか、『.me ジム』といった具合に連携できて、それがITによってきちんと効率化されていて、コミュニティのメンバーが便利に利用できるというのが将来像だろう」
--上場によって、谷上プロジェクトに対する株主からの視線が厳しくなる可能性もあります。
「当社のミッションとして『働くをもっと楽しく、創造的に』を掲げているので、それをコミュニティを通して実現するというのが谷上プロジェクトでめざしていることだ。短期的には、直接的にビジネスチャットの事業に寄与することはないだろう。だがコミュニティを形成することが、働き方やコミュニケーションに対するノウハウを深め、長い目で見ればビジネスにつながると考えている」
「また谷上プロジェクトについては、クラウドファンディングを活用した資金調達を実施したり、ボランティア的に協力してくれる地元の人も結構あったりと、とても幅広い人が関わっている。足元だけみると、普通の事業としては正直しんどいが、長期的な街の盛り上がりが当社の実績になると考えており、ぜひとも株主に理解を求めていきたい」
(聞き手は編集長 山本学)
■谷上プロジェクト Chatwork前社長の山本敏行氏が神戸市の都心である三宮からの近さに着目し、谷上に起業家などの新たなコミュニティの形成を企画したのがきっかけ。2018年に「クラウドファンディング型ふるさと納税」の制度を活用し、目標の1500万円を上回る2674万円を集めて、谷上駅ビル内にコワーキング(共有)オフィスの「. me」を開業。加えて「. me kitchen」(駅構内の飲食店)、「. me BASE」(貸しスペース)を運営する。
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