吉野カルナバイオ社長「創薬事業きわめて順調」 第1号は発売26年以降か

20190910吉野カルナバイオ社長

 創薬ベンチャーのカルナバイオサイエンスは、同社が開発した新規がん免疫療法に関する権利を、米バイオ医薬品大手のギリアドサイエンシズに供与する契約を結んだと6月に発表。契約金などで2019年12月期は4期ぶりの最終黒字を確保する見通しになり、株式市場でも注目を浴びた。同社はこれまでにも製薬大手との契約を結んでいるが、今後の事業展開や収益計画にはどういった影響があるのだろうか。吉野公一郎社長(写真)に聞いた。(聞き手は山本学)

−−がん免疫療法について米ギリアドサイエンシズとライセンス契約を結んだ。

 「ギリアド社が開発を進めると、段階的に通算で4億5000万ドル(約472億円)のマイルストーン(一時金)を受け取ることになるが、どのタイミングでいくら受け取るかといった詳細は公表しないことになっている。いまのところ申し上げられるのは、通常であれば、臨床試験のフェーズ1(第1相)、フェーズ2(第2相)など順を追って、新たな段階に入ると一時金を受け取るのが一般的、ということだけだ」

 「ギリアドには1つの化合物を導出(使用権を供与)したのではなく、その化合物をカバーする特許ごと導出している。このため、仮に第1候補の化合物で臨床試験などが上手くいかなくても、バックアップ(第2候補など)が用意できる。薬の世界だけに最終的にはやってみないと分からないという面は残るが、当社が導出した特許の化合物から医薬品の開発が順調に進むことを期待している」

−−創薬事業全体の進捗(ちょく)をどうみているか。

 「きわめて順調だと思っている。期待した医薬品の候補物質の多くは、順調に研究が進展しているし、そのうちの数点はきちんと大手に導出できた。通常は研究を進めるうちに脱落するものが出てくるが、研究開発本部長の澤(匡明・取締役)が手腕を発揮している。現時点で導出していない医薬品の候補物質について、自ら臨床試験に乗り出して当社の創薬力を示していく。臨床試験で安全性などが確認できれば、導出する際の対価も上がりやすくなる」

 「ギリアドにも導出が決まった今となっては、当社が最も力を入れているのは、自ら開発した医薬品の候補物質について自ら臨床試験を始めるということだ。そのために創薬の中心地である米国のサウス・サンフランシスコに2月1日付で拠点を開設した。BTKというキナーゼ(酵素)を標的に、アレルギーと、血液がん治療薬の2種類の候補物質で取り組む予定だ。現在は臨床試験の前に実施する非臨床試験を進めている」

−−黒字が定着するのは、いつごろか。

 「すでに導出した医薬品候補の研究開発の進展などをみると、2026~30年ごろには第1号の医薬品が発売になる可能性が高いと考えている。医薬品の革新性などから、発売すれば日米欧で年間1000億円超を売り上げる、いわゆる『ブロックバスター』になるはずだ。ロイヤリティー(特許使用料)の相場は売上高の5~15%で、下限で見積もっても1つの医薬品で年50億円を稼ぎ出す。つまり医薬品の発売後は、継続的に大きな黒字を稼ぎ出せるようになる見込みだ」

 「それまでの間は、一時金で収入を得ることになる。また今後は当社も自ら臨床試験で費用がかかる。一時金が発生するタイミングによっては、黒字を計上できないときもあるかもしれない。ただ、導出先の製薬大手はできるだけ早く医薬品を発売して、ジェネリック(後発品)との競合がない特許切れまでの時間を長く取ろうと、研究開発を急ぐことになる。従って今後は一時金を受け取る頻度は上がり、収入も潤沢になるとみている」

−−株主還元についての考え方は。

 「米国のバイオベンチャーをモデルにしている、といえば伝わりやすいだろうか。研究開発にできるだけ多くの資金を投入して、新たな医薬品の研究開発を加速していく。発生した利益も、可能な限り研究開発投資に回したい。このため米国のバイオベンチャーがそうであるように、薬の開発を成功させて企業価値を高めることで株主に報いたい」
(神戸経済ニュース)

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