(解説)神戸市の北神急行買収、非効率除く独自の方策 人口減対策には未知数も

20190331北神急行谷上駅

 神戸市が3月29日に発表した北神急行線の資産買収による一体運行は、単純に「民営化」なのか「公営化」なのか、という2分法とは異なった理解が必要だ。神戸市が北神急行電鉄の一体運営を検討できた背景には、北神急行線が神戸市営地下鉄から延びた、いわゆる「盲腸線」的な路線であったうえ、すでに一体的にダイヤを組むなど実質的には同一路線として運行していることがある。国内の自治体の「民営化の流れ」に逆行してでも市営化した方が合理的な面は大きい。

■長期的なコスト抑制への期待
 神戸市の久元市長は昨年12月27日の記者会見や、今回3月29日の記者会見でも三宮~新神戸の運賃を引き下げるのがねらいであると強調した。ただ、あくまでも赤字路線に税金を投入して、という立場ではない。民間と自治体の違いとは無関係に、事業主体が異なるためにコストが上昇したという非効率を取り除くのが今回の措置といえる。たとえば今後は、車両の購入や整備、信号系統といった鉄道システムなどを統合して全体としてコストを抑える効果などが、長期的に期待できる。

 そうした中で、北神急行線にも神戸市営地下鉄の運賃体系を適用できるというわけだ。運賃を引き下げるといっても「あくまで新神戸~谷上が特別に安いといった不公平がないように」(交通局)というのが神戸市の立場。3月29日の記者会見では三宮~谷上に280円程度という料金を神戸市が提示したが、神戸市営地下鉄の料金では「3区」(7~10キロメートル)の270円を参考にしたという。三宮から谷上とは反対方向に向かうと、板宿までが270円だ。

20190331三宮・谷上運賃

 運賃の引き下げによって現在1日に約2万5000人の北神急行の乗客が、6000人程度増加するとみる。その後の交通結節機能の強化などによって、2032年ごろには1日3万3000人程度にまで増加する見通しとしている。北神方面から神戸電鉄やバス、自家用車などを利用して三宮や元町といった中心市街に通っていた通勤・通学客のシフトを見込む。1日3万人強の利用者数で30年かけて、今回の買収額である198億円を返済する計画だ。

■人口減対策には未知数も
 神戸市は、究極的には交通の利便性が低いことによる人口流出の阻止につなげたい考えだ。久元市長が記者会見で、沿線人口減が交通サービスの低下を招き「東京一極集中が進むという負のスパイラル(悪循環)を断ち切るための思い切った措置」と強調していた。もっとも日本全体の人口が減少する中で、放置するのに比べればはるかに良いだろうが、沿線の定住人口が増えるかは不透明。とはいえ過去に阪急グループが北神地域と三宮のバイパスを計画した歴史的経緯から、曲折を経て発生していた非効率を解消するという点では評価できそうだ。

 従って、あらゆる市営化がすべて人口減少対策に当てはめられるわけではない。確かに地方の自治体による人口減少対策の手法に一石を投じたことにはなるだろうが、それは神戸市が地下鉄西神・山手線という優良な黒字路線を抱えているから可能だともいえる。今回は民間で成り立たなかった事業に行政が乗り出す例に当たらないが、だからといって赤字ローカル線は行政が運営するべきだということでもない。神戸の鉄道事情に応じた独自の課題解決策といえるのではないか。

 阪急電鉄によると、北神急行線を運行する北神急行電鉄(神戸市北区)は解散の方向だ。同社の従業員は阪急グループ内で配置転換し、「神戸市交通局の公務員に転じることはない」(神戸市交通局)という。「北神急行線」という名称を残すかどうかについては問い合わせが多いというが、これも現時点では決めていないとしている。西神・山手線の新神戸・谷上方面行き電車は、およそ2本に1本が新神戸止まりだが、これを全列車が谷上まで運転するようになるかも現時点では明らかでない。
 (神戸経済ニュース 山本学)

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