(寄稿)[神戸鳥瞰虫探し]創業地人気に新潮流、大阪・神戸より阪神間か
- 2017/01/11
- 21:44
正月の炬燵(こたつ)では、かるた遊びよりもトランプ遊びを選択した家庭が優勢になったはずだ。その効果もあってか年初の株式市場は強気。景気動向は、新規の事業創業件数によっても判断できるが、過去2年は増加傾向にあった。ただ、その傾向には変化が生まれてきている。
雇用保険の新規適用事業所統計で見ると、神戸の中心地よりも大阪の中心地が、大阪の中心地よりも神戸と大阪の間=阪神間の方が人気を集めている。景気浮揚感が生まれている過程で活動拠点の分散化が進んでいる。従来の中心地の相対的沈下につながるのだろうか。
厚生労働省所管の雇用保険は、雇用が生じた場合に強制加入が義務づけられている。新規創業動向をいち早く反映していると考えられる。傾向が出やすいように、これを6カ月移動平均で示した。この推移を神戸、灘管内の合計で見ると昨年から水準を上げ始めている。それよりも早く上昇傾向を見せているのが大阪東、梅田管内の合計だ。時期も上昇幅も神戸を上回っている。いずれも、2都市の中でも中心となっている地域だ。
この核地域を上回る勢いで新規適用事業所数が伸びているのが阪神地域だ。大阪労働局管内の大阪西、淀川、池田と兵庫労働局管内の芦屋、尼崎の合計では、大阪と神戸の中心地域よりも大きな変化率で上向いている。グラフで見ると阪神地域を示す折れ線がもっとも急な傾きになったというわけだ。
中心地域よりも高い伸びの地域が登場してきた現実は、産業構造の変化を示唆している。事業開始場所の条件から、人が集まり易い空間という項目を引きずり降ろしたのは産業の情報化進展が大きいと考えられる。特定分野での知財・人財の集積度も影響している可能性がある。
一連の背景分析と立証は容易ではない。ただ、旧来の中心地が相対的な沈下に直面している現実に対抗策は講じられていないとは言える。もちろん、旧来の中心地が地域の核であり続けなければならない理由はない。産業とその構造や働き方が変わり始めた象徴ともいえる新創業人気地の移動は、時代が動き始めた象徴でしかない。
(候鳥)
=随時掲載します
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