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(解説)「ダイバーシティはもうかる」は受け容れられるのか 欧米企業で普及

 27日に兵庫県が開催した「外資系企業・在日外国商工会議所合同サミット」では、ダイバーシティ(人材の多様化)をテーマに議論した。神戸に立地する大手の外国企業が議論の立脚点として「ダイバーシティやインクルージョン(社会的包摂)は事業戦略」(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパンのジェームズ・ケリー執行役員)といった立場を取ったのに対し、兵庫県側の参加者は人手不足の対応には女性や高齢者の就業が必要といった視点に終始し、議論は根本的なところで噛み合わなかった印象だった。株主の利益を最も重視する米国の大企業が、なぜダイバーシティを取り入れたのか改めて見直すことが必要だろう。

 この日の「サミット」は神戸市内に立地する外資系企業4社(日本イーライリリー、イケア・ジャパン、ネスレ日本、P&Gジャパン)、在日米国商工会議所、在日フランス商工会議所のそれぞれ代表者が出席。これに井戸敏三知事や、関連する部局長といった兵庫県の幹部が応対する形になった(写真)。まず兵庫県から高齢者や女性の就業率が低い兵庫県の現状を説明した後、出席者らが順に各社の取り組みを報告。そのうえで意見交換に入った。

20190228外資系企業サミット

 外資系企業は、そろって「ダイバーシティとインクルージョンは、社員と会社のさらなる成長につながる」(日本イーライリリーの北野美英執行役員)とダイバーシティを進める際の基本的な認識を説明した。ここで注目したいのは、各社がCSR(企業の社会的責任)のために、仕方なくダイバーシティを進めてきたのではない、ということだ。男女や年齢のみならず、多様な文化が社内で交錯することが、新たな気付きや意外な発想の転換といった形でイノベーション(技術革新)につながった実績がある、というわけだ。

 つまり、ダイバーシティは利益をもたらすが、それが当たり前になるまでには苦労も多かった、という話なのである。それは従来から役所が掲げる「男女共同参画」といったのんびりした話とは、根は同じでも真剣味が格段に異なる。兵庫県に当てはめるなら、人材の多様化を進めることで「気づき」が増えるのだから、住民サービスの向上という利益に結びつくはず。ダイバーシティは納税者の期待に応えることに直接、結びつく取り組みだ。

 一方で、井戸知事は「具体的な保育園のイメージを教えてほしい」と、保育園にふさわしい立地などを出席者らに問いかけたが、それは本来アンケート調査でもして聞けばよかったことだった。P&Gのケリー氏が「女性管理職の比率といった数字がすべてではない」「文化を作ることが大切」と強調していたが、議論を膨らますことはできなかった。欧米の大企業でダイバーシティが普及したいま、なぜダイバーシティが必要になったのか、そしてダイバーシティによって課題は乗り越えられたのか、といった点を改めて見つめ直すのが最も学びにつながるというのに。その視点に立てば、兵庫県庁の女性の管理職比率があと2年で15%になるかどうかという問題は、小さなことだと分かるだろう。

 「日本の中小企業は面倒臭がって女性を使いたがらない--」。こんな声が「サミット」終了直後に、どこからともなく聞こえてきてがっかりした。やや極論になるかもしれないが、多様性を必要とせず、画一的な労働力こそが求められるような生産性の低い職場であれば、女性はおろか、もはや男性の投入も不要なのではないか。そんな現場で利益を出そうと思うなら、作業のAI(人工知能)化やロボット化といった徹底した省力化を進めるべきだし、それを制度融資や信用保証で支えるのが自治体の経済政策の王道というべきだろう。ダイバーシティは利益のためにやっている、という基本的な考え方が受け容れられるまで、まだずっと日本は低成長を続けるのだろうか。
(神戸経済ニュース 山本学)

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