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(解説)地下鉄の新型6000形が映すニュータウン 低コストで快適を求める将来



 神戸市営地下鉄の西神・山手線は16日、25年ぶりの新型車両である6000形の営業運転を開始する。新しい電車の特徴は、安全性や省エネ性能の向上に加え、乗客向けに快適さを高めたこと。2022年度までに全28編成を6000形に置き換える。鉄道車両の通常の寿命である40年よりも短い使用期間で退役させる車両も出てくるが、全列車を同形式にすることで維持コストの削減などをねらう。こうした路線経営は西神・山手線の歴史と表裏一体である神戸の「ニュータウン」が求める将来とも重なるかもしれない。

 一般向けの試乗会を翌日に控えた8日、神戸市交通局が報道関係者向けに新型車両を公開したのは名谷車両基地(神戸市須磨区)だった(上の動画)。名谷駅から車両基地まで歩いて向かう途中、目に入ったのは「名谷15団地」という団地名を刻んだ大きな碑(下の写真)。名谷駅は1977年に神戸市営地下鉄が初めて開業した際の終点で、もう一方の終点は新長田だ。大都市の象徴である地下鉄に期待された役割は、新しく開発したニュータウンの名谷団地と国鉄(現在のJR)の駅を結ぶことだった。

 そして徐々に路線は伸びていく。1983年には新長田〜大倉山が開業。85年には学園都市〜新神戸が開業。87年に西神中央までの全線が開通し、93年には西神中央〜伊川谷間に西神南駅が開業する。同じ歩調で82年に西神住宅団地が街開き。続いて神戸研究学園都市が85年、西神住宅第2団地が93年に街開きした。ニュータウンと主要駅を結ぶ役割は、都心・三宮への乗り入れでより強化されたといえる。

 名谷〜新長田の開業当初は4両編成の電車が6編成(6本)あるだけだった。その後の路線延伸、沿線人口の増加に伴う乗客数の増加で車両を順次増備した。1977年に開業した当時の1000形はいまも主力だが、6両編成に増結。その後は88年に投入した2000形、93年に投入した3000形と、外観以外に省エネ性能など、新たな技術を取り入れた車両が登場した。技術を更新しながら、車両を増やして輸送力を高めてきたのが西神・山手線だ。

20190216名谷15団地

 しかし、時代は変わった。おそらく路線がこれ以上、伸びることはないだろうし、沿線人口が急速に増えることもなさそうだ。このため、いかに現在のインフラで、より快適度を高め、維持管理コストを抑えるかが求められることになる。新型6000形は1編成が9億円弱というから、全28編成を入れ替えれば約250億円という巨額のプロジェクトだ。ただ3種類、4種類といった複数の車種を温存すると、基地に常備しておく交換部品などの数も増える。28編成すべてが同じ6000形である方がメリットは大きいと、神戸市はそろばんを弾いた。

 ニュータウンもいつの間にかオールドタウンとささやかれるなど、街開き当初とは様子が変わってきた。30年、40年と時が流れ、求められるようになってきた投資は新しい宅地の開発ではなく、現在の住居の快適度をどう高めるかということだろう。そのためにコストもかかる。そうしたなかで何より重要なのは、住民の間で将来のビジョンを共有することだ。どういう方法で快適さを高め、結果どういった街にしたいのか、住民の合意形成は欠かせない。

 あるいは、そうした課題も6000形は映しているのかもしれない。6000形の外観は、神戸市の地下鉄では初めて市民投票で2016年に決めた。神戸市が示した3種類のうち「B案」が今回のデザイン。多数決とはいえ合意形成を通過したうえでのデザインだ。だとすると今後、住民の合意が形成できるまで、A案、B案、C案、D案、E案……と、粘り強くニュータウンの将来像を描き続けるのが自治体の役割になるということか。そんな示唆を新型車両から見いだすのは、深読みが過ぎるだろうか。(神戸経済ニュース 山本学)

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