(解説)ワールド再上場1週間、厳しい市場の評価 「プラットフォーム」納得するか
- 2018/10/08
- 12:45
前週末5日でワールド(3612)が東証1部に再上場してから1週間が経過したが、市場の評価は厳しかった。上場前の公募・売り出しで同社株を取得した投資家の見切り売りなどが継続している。同社が上場するねらいが必ずしも投資家に浸透していない中、値動きの悪さもあって一段と買いが入りにくくなっている。今後の株価を見極めるうえでは、上山健二社長(写真中=9月28日)が説明する「プラットフォーム」に、どれほどの投資家が納得するかが鍵になりそうだ。
ワールド株の5日終値は2591円と、9月28日に付けた初値の2755円を5.95%下回った。初値を上回ったのは、初値を付けた直後にとどまり、その後は売りが優勢。上場4日目である10月3日に2500円まで下落して、ひとまず下げ止まったが、公募・売り出し(公開)価格の2900円には届かず、上場前の公募・売り出しで同社株を取得したまま保有している投資家は、全員が含み損という事態が継続している。同社株への見切り売りが続き、株価が本格的に上昇する契機は見極めづらい。
背景には同社の成長イメージが投資家に理解されなかったことがある。ワールドはファストファッションを除けばアパレル国内首位という大手だ。しかも店舗での販売が主力で、主な百貨店やショッピングセンターには既に出店済み。駅構内などにも既に進出しており、好立地で高採算の店舗が増えにくいと見られる中での少子高齢化や人口減少という構造的な逆風を受ける。アパレル大手として成長の余地が疑問視されたということが大きい。
そうした中で9月28日に記者会見した上山健二社長が強調したのは「ファッション業界の成熟化は現に進んでいる」という現状認識だった。供給過剰、過剰店舗の中で上山氏が強調したのは同社の経営資源を「プラットフォーム」として、同業他社にも提供し、BtoB(企業間)事業を拡大するという方針だ。上山氏は「激化する競争の中で、少なからず業界再編も起きる」とも指摘。そのうえで、店舗網や物流、少量多品種生産のノウハウ、店作りのノウハウ、受発注システム、ネット通販の仕組みなど、これまでの同社の社内システムを中小を含めた他社ブランドなどに提供するという。
上場によって取得した資金を「デジタル事業への投資」に投入することが目論見書に明記されたのが、出遅れたネット通販を強化する、といった程度に多くの投資家に受け止められたのが実情だろう。ただ上場後の記者会見などで分かったのは、上山氏率いるワールドが市場縮小の少し先を見ているということだ。これがきちんと株式市場に伝わっていれば、少しは投資家が「なぜ上場するのか」という疑問を抱かずに済んだのではないか。さらに将来に業界再編が控えているのなら、買収するにしても買収されるにしても上場会社であるほうがスムーズという面もある。
3日にはワールドとTSIHD(3608)が首都圏で物流の一部を共通化するとも発表。物流の業界共通基盤を構築する意思を示した形だ。上山氏がいう「プラットフォーム」を活用した事業など、従来のブランド事業以外の分野で(日本基準の営業利益に相当する国際会計基準の)コア営業利益の「半分くらいを稼げるようにというのが将来のイメージ」(上山氏)を市場に浸透させることが、同社株を適切に評価するうえで欠かせないのではないか。(神戸経済ニュース 山本学)
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