(解説)ワールド13年ぶり再上場 再び問われる上場意義と市場に残る疑問
- 2018/09/24
- 17:25
神戸市中央区のポートアイランドに本社(写真)を置くアパレル大手のワールド(3612)が28日、2015年以来13年ぶりに株式を公開する。新規株式公開(IPO)の公募・売り出し(公開)価格は2900円と、仮条件(2900~3200円)の下限に決まるなど、早くも株式市場の厳しい評価に直面しつつある。同社の成長イメージが投資家に伝わりにくかったうえ、再上場を目指す意義も問われた形だ。同社は今後IR(投資家向け広報)を強化するとみられるが、投資家が納得できる情報提供をできるかが鍵になる。
ワールドと同じ日に東証マザーズに上場するフロンティア・マネジメント(7038)、前日に新規上場する極東産機(6233、ジャスダック)やSBIインシュアランスグループ(7326、マザーズ)など、今年に入ってほどんどの銘柄は公開価格を仮条件の上限で決めた。上限で決まらなかったのは3月20日に東証2部に上場した信和(3447)以来だ。ワールドの仮条件は、8月22日にの有価証券届出書での想定価格(3630円)を大幅に下回っており、投資家が同社株を敬遠した様子が浮き彫りになる。
ワールド株が不人気である理由の1つには、6日に8年ぶりで新規上場したナルミヤ・インターナショナル(9275)の影響との指摘があった。ナルミヤは公開価格の1560円を下回る1501円で初値を付け、その後は13日に1325円まで下落した。再上場という点で共通し、子供向けか大人向けかの違いこそあれアパレルでも共通するナルミヤの値動きが悪かったことで、羹(あつもの)に懲(こ)りて膾(なます)を吹く投資家が増えた面があるという。
それ以前に「ここで改めて上場する意義が見出せない」(証券会社のIPO情報担当者)との指摘も多い。ワールドが日本初のMBO(経営陣が参加する事業買収)で05年に上場廃止をすると決めた際、当時の寺井秀蔵社長は「短期間で成果を求める市場の声に左右されることなく、中長期的な視点で経営することが適当」(05年7月26日付の日本経済新聞朝刊)と説明した。それが「外部株主の厳しく規律あるコーポレート・ガバナンスの視点を経営に活かしていくことが、今後の当社グループの更なる成長にとって有益」(8月22日付ワールドの発表資料)と180度転換した理由がどうも分かりにくいという。
非上場だった13年間、ワールドの業績は極端に悪化もしなかった半面、急速に改善したわけでもなかったとの見方が多い(グラフ)。一方、ネット通販などが台頭するなかで、出遅れたイメージがある。そうしたなかで目論見書によると、今回のIPOで調達する資金のうち約102億円を、優先株の消却に充てるという。同社が優先株を発行したのは「元をたどれば(05年の)MBOのための借金ではないのか。非上場だった13年間に何をしていたのか、という疑問がどうしても残る」(ベテランの証券マン)との指摘も出ていた。
もし株式を非公開化して進めるはずだった経営改革がうまく行かなかったのであれば、それを総括する必要がある。あるいはこれまでと別の道で今後成長するのであれば、資金調達の機会に、資金の出し手である投資家に改めて説明する必要がある、というのが多くの市場関係者の見立てといえる。ワールドは21日付でIR室を新設した。今後はIR体制を強化し、投資家の「疑問」解消に努めるとみられる。新規上場の28日には上山健二社長は上場承認後では初めての記者会見を予定している。上場承認後はメディアの取材を受け付けてこなかっただけに、発言が注目されそうだ。(神戸経済ニュース 山本学)
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