(解説)もうすぐ開催まで1年、大阪・関西万博で兵庫・神戸が飛躍するには…

【神戸経済ニュース】明けましておめでとうございます。2024年が始まりました。神戸で今年、開催する世界的に大きな行事といえば世界パラ陸上競技選手権ですが、これと対照的に準備の遅れが指摘されているのが大阪市で2025年4月13日に開幕する国際博覧会(大阪・関西万博)です。東京を中心に、中止を主張する人も現れるぐらいですが、兵庫県や神戸市には博覧会を価値の高いものに押し上げたうえで、博覧会の恩恵をも受けられる可能性を秘めていると思います。もうすぐ開幕まで1年。今年は博覧会に向けた準備が慌ただしくなりそうですが、そこで何をすべきか考えたいと思います。

◼️時宜に合った「ひょうごフィールドパビリオン」
 兵庫県の斎藤元彦知事が就任前から掲げていた目玉政策の1つが「ひょうごフィールドパビリオン」だ。兵庫県内のSDGs(国連の持続可能な開発目標)に関する取り組みを体験できるプログラムにまとめ、国内外から訪れる国際博覧会への来場者を、兵庫県に観光誘客する試みだ。単なる観光の施策というだけでなく、伝統的な地場産業に農林水産業、食に関する事業、自然遺産、防災、産業遺産など幅広い分野の観光資源になりうると判断できる取り組みを、どんどん認定している。兵庫県が認定した件数はすでに185件になった。

20240101ロゴとキャラ
斎藤兵庫知事の背中(左)と記者会見に登場したミャクミャク

 ひょうごフィールドパビリオンの取り組みとは、ひとことでいうと「温故知新」だ。すでに地元にあるものを、いわば「見える化」する取り組みと言ってもよいだろう。まずは「観光客に見せたいもの」「観光客に見せられるもの」が、これだけあるというのを整理することができた。動線の工夫や多言語化によって、海外からの観光客も受け入れることができるようになる。兵庫県を訪れる人に、ひょうごフィールドパビリオンの一覧表を見せることができれば、少なくとも2つや3つは、気になるものや、好みのものが見つかるはずだ。

 これまでの地元の取り組みを見直し、再構築し、場合によっては周辺のインフラまで再整備したうえで世界に向けて「どや」と問うわけだから、シビックプライド(地域への誇りや愛着)の醸成にもつながる。観光とは単に、よそから人を呼ぶだけではなく、街づくりそのものだ。さらに今回、県内各地の取り組みを「見える化」したことで、事業が継続しているか確認するなど一覧表の定期的なメンテナンスによって中長期的な観光資源の維持・拡大などにもつなげられる。ひょうごフィールドパビリオンは人口減少時代に向けて、時宜に合った取り組みだと評価できる。

◼️兵庫県は博覧会協会に働きかけを
 だが、見える化した観光資源を、どうやって見てもらうのかというのは大きな問題だ。「兵庫」「HYOGO」を海外に浸透させるのは絶望的だ。どういうことかというと、たとえば先進国が中心とはいえ世界中にシューズの顧客を持つアシックス(7936)は、宣伝広告費に毎年毎年300億円超を費やしている。世界で知名度を上げるというのは、それぐらいの覚悟が必要ということだ。もちろん兵庫県に、そんな余裕はない。だから、いかに「万博」の力を使うかという話だし、開幕までの向こう1年が勝負になってくる。

 ところで、ひょうごフィールドパビリオンのシンボルマークというのがある。兵庫県は公式に決定したという発表は特に記憶にないが、日本海側から淡路島まで兵庫県の形に並んだ、さまざまな色の正方形17個で多様な取り組みを表現したとみられる。斎藤氏がことあるごとに着用しているポロシャツの背中(1枚目の写真左)には、大きくプリントしてあるし、最近では県の記者会見の写真などで背景に写り込むこともあるため、見たような気がする人もあるだろう。なぜ、このマークが必要なのかということだ。

 本来であれば、博覧会のロゴマークや公式キャラクター「ミャクミャク」(1枚目の写真右)を利用できればいい話だ。ただ現時点では主催団体の2025年日本国際博覧会協会は、営利目的での使用を非常に固く禁じている。協会のホームページにはご丁寧にも「旅行パンフレットは商品・サービスの販促を内容とするものになりますので、ご使用いただくことはできません」と明記してあり、観光誘客には使えない。結果として博覧会の前売り券を販売している旅行会社のホームページに、公式ロゴが一切使われていないという馬鹿馬鹿しいことが起きている。兵庫県は博覧会協会に働きかけて、こうした状況を改めさせる必要がある。

 万博の花ともいわれる外国政府のパビリオンは、1件も着工されることなく2024年を迎えた。会場の面積は21年に開催したドバイの博覧会よりも狭いこともある。博覧会協会は「会場内のパビリオンだけが展示物ではない」と言えるものなら言いたいだろう。そこで、ひょうごフィールドパビリオンの出番だ。パビリオンに勝手に見立てるだけでなく、いまこそ、ひょうごフィールドパビリオンを正式に関連行事と認めさせるよう交渉すべきだ。見るべきものは会場外にもある。県内各地の取り組みも、博覧会の公式ロゴやキャラクターを使えれば出展者の士気は上がるし、何より訪れる観光客にとって分かりやすくなるのは明白だ。

◼️「神戸登山プロジェクト」「神戸医療産業都市」も応募の検討を
 こうした流れができるなら自治体として神戸市も、ひょうごフィールドパビリオンに応募すべきか検討してもよいだろう。特に候補になる取り組みは「神戸登山プロジェクト」と「神戸医療産業都市」だ。特に神戸登山プロジェクトは登山や野外活動といった、山や森などの自然をレジャーに活用することの持続可能性をテーマにした取り組みであり、登山ガイドなどを通じて観光客を案内することができる。しかも神戸市は、森林に関する学会の権威を副市長に起用したのだから、取り組みとしては重量級だ。打ち出し方次第では、ひょうごフィールドパビリオンの目玉にとどまらず、全体をけん引する役割をはたす可能性もある。

20240101神戸医療産業都市
神戸医療産業都市、奥に神戸空港

 さらに可能性があるのは神戸医療産業都市だ。博覧会を機会とした各国政府の訪問団による視察も増えるだろうが、医療や医薬品開発、スーパーコンピューターなどに関心がある一般の人も受け入れられるルートを検討してはどうか。年に1回開催している神戸医療産業都市の一般開放と同規模のものを常時開催するのは難しいにせよ、たとえば細胞を使った実験中のロボットや、世界最高レベルのスーパーコンピューターがガラス越しにみられるだけでも興味のある人にとってはうれしいものだ。しかも興味のある人は、広い世界を見渡せば少なくない。荷物検査だけ力を入れれば、訪日客でも対応できるのではないか。

 神戸医療産業都市は、産業団地としてみれば、進出している企業・団体の数は多いし、高度な知的財産を持つ機関が集まっているし、きわめて優れた産業集積地であるといえる。課題はいかに「都市」たりえるかと、かねて指摘されている。年に一度の一般公開とは別に、神戸医療産業都市推進機構は都市の自治組織として「都市」の観光ルートを考えてみてはどうか。「世界に冠たる医療産業都市になるには象徴的な成功例が必要」というが、そのためには集まる人が多いに越したことはない。もう1つの課題とされる神戸市の住民への浸透度も、もちろん高まるだろう。

 そして神戸港だ。世界的な地位は下がったとはいえ、依然として日本では重要な港湾だ。ここ数年は1995年に阪神淡路大震災が発生する前のコンテナ取扱量をようやく上回り、アジアと北米をつなぐ港として世界的な地位復権もめざす。世界に注目してほしい物の1つではないのか。さらに水素の活用などカーボンニュートラルポート(CNP、二酸化炭素排出量実質ゼロの港湾)として世界に先駆けた取り組みもある。観光コンテンツ化することを前提に、神戸港の何を、どう見せたいかを検討するだけでも、将来の神戸港の姿を考えるうえで役立つはずだ。神戸市の住民にとって、神戸港の恩恵が「見える化」できれば一層よいように思う。

(神戸経済ニュース編集長 山本学)

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